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NoMaps2019に参加して「AI開発における知財の取り扱い~Win-Winの関係構築に向けて~」を開催しました!

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2019年10月17日、特許庁はASCII STARTUP協力のもと、NoMaps2019ビジネスカンファレンス「AI開発における知財の取り扱い~Win-Winの関係構築に向けて~」を会議・研修施設ACU-A(アキュ)にて開催。AI技術の知財の取り扱いについてディスカッションした。

パネリストとして、AWL株式会社CTO 兼 AI HOKKAIDO LAB所長 土田 安紘氏と、佐川慎悟国際特許事務所 所長弁理士/日本弁理士会北海道会 副会長の佐川 慎悟氏が登壇。司会は、特許庁企画調査課 スタートアップ支援チーム 課長補佐 進士千尋氏が務めた。

進士千尋氏(特許庁企画調査課 スタートアップ支援チーム 課長補佐)

冒頭では、特許庁の進士氏がスタートップの知財戦略と特許庁の支援施策を紹介した。スタートアップにとって、企業価値≒知的財産。知財はスタートアップにとって必須であり、独占だけでなく、大企業との連携や資金調達時の信用のツールにもなる。特許庁では、1)知財アクセラレーションプログラム(IPAS)、2)スタートアップのスピード感に対応したスーパー早期審査、3)特許に関する手数料を3分の1に減額、4)スタートアップ向けの知財ポータルサイト「IP BASE」の開設、5)イベントやセミナーを全国で実施している。

土田 安紘氏(AWL株式会社CTO 兼 AI HOKKAIDO LAB所長)

続いて、土田氏が機械学習×知財の状況を解説。現在主流の機械学習系AIは、フレームワーク、基礎技術、応用技術の3層構造で、AIエンジニアは、フレームワークを使ってAIを開発している。基礎技術はアルゴリズムの部分で、アメリカ、カナダ、中国が先行。日本は応用技術に当たるアプリ開発のビジネスに特化している。なお、フレームワーク技術の特許はGAFAが持っているが、オープンライセンスなので誰でも無償で利用可能だ。

機械学習関連技術は、フレームワーク、基礎技術、応用技術の3層構造

AIアプリを発明するには、大量のデータを集めてラベル付けしたデータセットを機械学習にかけ、学習済モデルを構成し、この学習済モデルをアプリに利用する。この学習済モデルは数値の羅列であるため、特許化しても侵害立証が難しい。データの集め方は目的によって異なるため、データセット化の独自ノウハウを権利化する方法を考えるといい、と指南した。

AIはこれまでのソフトウェアとは性質が大きく異なるため、保護の方法論が確立していない

土田氏と佐川氏によるパネルディスカッションでは、「AI開発成果物の知的財産権は誰に帰属する?誰が利用できる?」というテーマで議論。開発の委託元は、開発費を負担するため、すべての権利を取得したいが、委託先のベンダーは、機械学習のノウハウを横展開して成長したい。両社がWin-Winの関係を構築するための契約の形を土田氏、佐川氏がそれぞれ提案した。

佐川 慎悟氏(佐川慎悟国際特許事務所 所長弁理士/日本弁理士会北海道会 副会長)

土田氏の提案は、学習済モデルの知財権は委託先ベンダーが所有し、委託元A社のほか、B社、C社にも学習済モデルを自由にライセンスできる、というもの。B社、C社は、ライセンス料に加えて、それぞれの会社が持つデータを提供する。委託元A社は、競合他社へのライセンスを許可する代わりに、学習済モデルの使用ライセンス料の一部を収益として得られる。委託先ベンダーは、複数社からデータとライセンス料を得ることができ、継続して開発を続けられる。得られたデータから学習済モデルがアップデートされるので、委託元は、最新の学習済モデルが使えるのがメリットだ。

土田氏の提案

佐川氏の提案では、学習済モデルの知財権は委託先ベンダーが所有するが、一定期間は委託元A社の同業他社にはライセンスしない、というもの。一定期間は、委託元A社が独占的に使用できることで、競合に対してアドバンテージが得られる。ただし、他業種企業に対しては、制限期間を設けずに利用可能とする案を提案した。

佐川氏の提案

GAFAのAI特許のうえでサービスやソリューションを展開しているとはいえ、企業間での知的財産権の枠組みなどでは、考えるべきこと、調整すべき課題がまだまだ多い。新たな領域に挑むスタートアップだからこそ学びになる部分が多かったのではないか。