イベント
「海外展開に向けたスタートアップと知財戦略 スタートアップ×知財コミュニティイベント by IP BASE in 大阪」を開催しました!

2019年9月26日、特許庁はASCII STARTUP協力のもと、成長するスタートアップが海外進出する際に必要になる知財戦略の立案に向けた勉強会セミナーイベント「海外展開に向けたスタートアップと知財戦略 スタートアップ×知財コミュニティイベント by IP BASE in 大阪」を大阪のインキュベーション施設「大阪イノベーションハブ」で開催した。

本イベントは、関西の起業家・スタートアップ関係者と、弁理士などの知財関係者を一堂に会したコミュニティイベントであり、特許庁が推進しているスタートアップ支援施策を周知するとともに、スタートアップの成長に関わる方々の相互理解・コミュニケーションを促進することを目的としている。

00.jpg

第1部では特許庁が進めているスタートアップ支援の取り組みの紹介とともに、「海外展開に向けての心得」というテーマで、米国に進出したスタートアップが巻き込まれるであろう訴訟問題にどう向き合うべきかという話を中心にトークセッションが行われた。第2部では、スタートアップの知財戦略に取り組んでいる方々(弁理士、VC、企業経営者)による、海外進出を目指すスタートアップに求められる具体的な知財戦略についてパネルディスカッションが行なわれた。

まずイベント開催に先立ち、経済産業省 近畿経済産業局長 米村猛氏から、冒頭挨拶として特許庁が感じている知財に関する問題意識について紹介がなされた。特に大阪は、2025年に万博が開催されることとなっており、それと併せた形でスタートアップの海外展開や知財の利活用を推進している。

01.jpg

お堅いイメージが付きまとう特許庁であるが、近畿経済産業局の局長がTシャツ姿で登壇するなど、ベンチャーと同じ目線に。次に特許庁 総務部企画調査課 企画班長(スタートアップ支援チーム)菊地陽一氏から、特許庁によるスタートアップの知財戦略支援施策の紹介があった。

02.jpg

「事業の独占、他社との協業、あるいはスタートアップの信用力の面から見ても、スタートアップの企業価値を決めているのは知財。しかし何からやってよいのかわからないという悩みをお持ちの方々がたくさんいると思うので、特許庁としてもいろんなスタートアップ支援施策を用意しているし、それを利用してほしい」(菊地氏)

第1部後半では、米国シリコンバレーに研究開発拠点を持つ大阪発ベンチャーのクオンタムバイオシステムズ 代表取締役社長 本蔵俊彦氏から、米国に進出した企業が必ず巻き込まれるであろう訴訟問題について、実体験を含めて取り組みの紹介がなされた。

03.jpg

「本気で勝ちたいと思うなら、強いチームを作るためにも、海外進出を視野に入れるべき。スタートアップを取り巻く環境も、海外進出を支援する仕組みもできてきている。最初からすべてうまくいくわけではないだろうが、先に行った人から学び、自分もこれから成長するという意識でやってほしい」(本蔵氏)

第2部では、多くの海外企業の知財関連案件の経験を持つCPJAPAN綜合特許事務所 弁理士 井関勝守氏、投資を受ける側・する側両面の経験を持つIP Bridge イノベーション事業部担当ディレクター 金野諭氏、DeepTech系VC Abies Ventures ベンチャーパートナー 長野草太氏、ロボティクスファニチャー事業の海外展開を進める株式会社I&C 代表取締役社長 佐田幸夫氏の4氏と特許庁 菊地氏によるパネルディスカッションが行なわれた。テーマは「海外展開に向けたスタートアップと知財戦略」で、訴訟や契約面で留意すべき点について議論が展開された。

04.jpg

「展示会などに出展すると、すぐ欲しい、すぐビジネスがしたいという話になることがある。それに対して持ち帰って、上司に話を通して、とやっていると話自体がなくなってしまうこともある。展示会の出席者に権限を与えるなど、出展するなら準備をしておかなくてはいけない」(井関氏)

「中国の展示会に出展すると、1年後くらいには完ぺきなコピー商品が出回るし、カタログさえもロゴを除けばそっくりそのままのものが出てくる。家具とかインテリアはコピーされやすい。今はデザインや素材の作りこみの差や、構造と意匠の組み合わせで保護できるようにしている。」(佐田氏)

「海外では性善説は全く通用しない。自社でブレークスルーが生まれない場合、他社の足止めに知財を使う企業もある。リソースに弱点のあるスタートアップはそれに備えなくてはならない」(長野氏)

「海外に特許出願すると、承認までに1か国あたり100万円くらいかかることがある。米欧中だけで3400万円になり、スタートアップには負担が大きい。そういう時はPCT国際出願制度を利用することを薦める。30ヵ月という締め切りがあるから、その間にその国でビジネスができるかどうかを調査し、ダメならそこからは思い切って撤退する」(金野氏)

05.jpg

少ないリソースの関係からどうしても知財を後回しにするスタートアップが多い現状に対し、多くの海外経験を持つ4氏はいずれも知財戦略の重要性を説く。特に一度訴訟に巻き込まれると取り返しのつかないダメージを負うこともある。それを避けるためにも、スタートアップこそ経験ある弁理士や特許事務所とともに知財に取り組むべきという強い印象を受けた。

特許庁は今後も同様のイベントを全国で展開していく予定である。意欲あるスタートアップの参加を期待する。