基礎知識
一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集
IP Startegies for Startups

電気一般

04:ディジタルメディアプロフェッショナル
~IPライセンスを事業の柱に~

会社紹介

組込みシステムのビジュアル・コンピューティング分野を事業の中核とする研究開発型ファブレス半導体ベンダー。

GPUプロセッサを含めた高度なGPGPUの開発技術と低消費電力の技術をベースに、ビジュアルコンピューティング分野におけるワンストップ・ソリューション・プロバイダーとして、各種高付加価値IPコアの提供からLSI、モジュール、プロフェッショナルサービスの提供まで、お客様のニーズに合わせたソリューションを提供している。

主な製品・サービス

・IPライセンス事業 グラフィックスIPコア

業界No.1のSmall Area Size & Low Power IPとして活用されており、大手メーカーの携帯ゲーム機をはじめとしてデジタルカメラやドライブレコーダーなどさまざまな製品に採用されている。

・製品事業 グラフィックスLSI

限定された分野を対象に、自社IPをベースとした半導体製品を開発・販売している。

1. 事業方針お客様のニーズを探りながら、徹底した差別化戦略を採用

同社は産学連携によって生まれた技術をベースとした新構造グラフィックスプロセッサを設計・販売する大学発ベンチャー企業として創業。以後、企業向けのGPUを事業の根幹としつつ、画像認識や画像処理、AI技術に関する独自のIPをライセンスすることで、事業の拡大し続けている。

グラフィックプロセッサに関する分野は、基盤的な技術の多くを既に大手企業が開発し、知財で防御を固められていることが多い。そのため、同社では他企業との技術的な差別化や製品の独自性確保という視点を重視。特に顧客のニーズに向き合ったところに大手や競合他社がまだ気づいていない「穴」があると考えて事業を展開することで、成功を続けている。

2. 知財戦略AI活用へ向けた業界標準団体に参加

・業界標準策定に参加

同社では、OpenGLなどの世界的な業界標準を策定するクロノス・グループに参画し、AI活用へ向けた標準化に積極的に参加。今後の動向をいち早く察知することはもちろん、ベンチャー企業として知名度の低かった同社のプレゼンスを上げる場として大いに活用している。

クロノス・グループでは、約30年前のシリコングラフィックス隆盛時に特許紛争が絶えなかったという反省にもとづき、標準を採用して準拠すれば特許はオープンにするという考え方を推進。団体に所属する企業同士では標準技術に関しては特許で争わないという申し合わせが交わされている。

標準に参画することで、コモディティ化された多くのモジュールについては特許調査費用、出願費用、紛争リスクを最小限に抑えつつ、独自性の強いアクセラレート技術、画像表現技術、等について調査費用や出願費用を集中的に投資することで、技術の差別化に成功した。

新規特許考案のモチベーションを高めるために、特許報酬制度も作成し活用した。報酬制度は出願、権利化時に一時的な報酬を与えるほか、権利化後の企業利益に基づく報酬も与えている。報酬制度によって自社の知的財産の拡大に貢献した。

特許費用の増大を防ぐため、出願国の選定は予想される事業規模などに基づいて慎重に行われている。また、侵害の立証が困難な技術についてはあえて特許化しないという戦略も併用している。

3. 活動体制「アイデアシート」 によって研究者と密接な連携を図る

特許出願に関しては「アイデアシート」と呼ばれる独自シートを通じ、社内のアイデアを収集している。シートを活用することで、アイデアが埋もれてしまう無駄が生じないよう心がけている。事前調査や経営陣を交えた特許会議での吟味を経て、事業に貢献しない出願を抑え、管理を行うとともに、外国人従業員を活用して、外国語出願について一定の内製化をして費用増大を抑えている。また、弁理士を活用することで出願時の記載漏れ等による権利喪失のリスクを減らしている。

特許調査に関しては、自社技術が他社権利を侵害しないよう、重複出願を行わないように特許データベースを活用し費用増大を抑えている。

4. 活動の変遷大企業からの採用などビジネス拡大に伴う調査制度の改善及びシステム化

大学発ベンチャーとして創業した当初はLSIの試作を進めていたが、多様な規模の事業に柔軟に対応できるようにビジネスモデルを転換。設計物をライセンス化するIPビジネスに移行した。

大手企業との提携に伴い、アライアンス企業にも訴訟リスクが及びやすくなってきたため、技術の事前調査及び機密の保持をより徹底する必要が生じた。特許データベースも新しいものに変更し侵害調査を徹底した。

その後、特許会議などを組織して、特許調査ばかりでなく出願戦略についても社内手続きをシステム化していった。

5. 知財の活用IPライセンスを事業の柱に

・IPライセンス事業の拡大

同社は事業の本質を製品と考えている。特許権そのものを収入の柱としておらず、IPライセンスの上での権利保全を目的としている。IPライセンスでは、模倣品が流通することも顧客の損害につながるため、そういったリスクを回避するために、出願、権利化等につながる知財投資を行っている。事業のコアであるIPに対する信頼性については、国内外への大企業等に限らず、投資家(金融機関・ベンチャーキャピタル等)からも高い評価を得た。

・技術分野の選定

技術分野の選定においては、自社で必須特許の権利化を行えそうな分野をより重視することで、ビジネス上の利益に貢献できるよう特許調査の軸足を広げている。