基礎知識
一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集
IP Startegies for Startups

バイオ

08:株式会社ファンペップ
~産学連携ベンチャーのベストプラクティスをめざして~

会社紹介

大阪大学大学院医学系研究科で確立された機能性ペプチドのデザイン、創製、最適化技術をプラットフォームに用いて、次世代創薬や機能性化粧品、医療機器を開発することを目指して2013年に設立された。大学で生まれるシーズ技術をインキュベーションし、製薬企業等とのパートナリングとライセンス供与によって実用化への橋渡しを行っている。

主な製品・サービス

・SR-0379/皮膚潰瘍治療剤

大阪大学大学院医学系研究科の研究で発見された血管新生活性と抗菌活性を有する新規ペプチド「AG30」をもとに研究を重ね、安定性が高く製造コストが安く抑えられる機能性ペプチド「SR-0379」を創製。

・機能性ペプチドの実用化へ向けた共同研究

病気に関連するタンパク質の働きを阻害する抗体を体内で産生できる機能性ペプチドは、体外で大量に製造した抗体を体内に注入する現在の抗体医薬品と比べ、経済的負担や医療財政上の問題を大きく軽減することが期待されている。

・マウスウォッシュ / 除菌スプレー

森下仁丹(株)と共同開発した製品。

1. 事業方針共同研究から生まれた機能性ペプチドの特性にあわせて、研究方針を判断

同社における研究は大阪大学大学院医学系研究科と連携した機能性ペプチドの共同研究が基盤となっている。同社内での研究は大学が開発した創薬エンジンを活用した創薬が中心だが、医薬品は売上を回収できるまでのスパンが長期にわたるためリスクが大きい。そのため、研究の過程で生じたペプチドから、機能性化粧品などに適したものは化粧品へ展開。創薬事業と化粧品事業の2つの軸で事業を展開している。

研究テーマの特性上、はじめに目標を決めてそこへ最適化していくというアプローチがとれないため、研究過程で生じたペプチドの配列や特性にあわせて、長い時間をさらにかけて医薬品へ展開していくか、比較的短期の売上が見込めるヘルスケア分野で事業化していくかを適宜判断している。

2. 知財戦略量より、スピードを重視した知財戦略

・ベンチャー企業ならではのスピードを活かした効率的な知財活動

医薬品の知財戦略は、一般的に後発医薬品に対する防衛の意味合いが強い。ベンチャー企業では広範囲に大量の特許を張り巡らせて参入障壁を高める大企業のような戦略をとることは難しい。そこで同社では、限られたコストであっても知財活動を最大限に効率化させていくために、勝てる知財の特定とスピーディーな出願を重視。ベンチャー企業ならではのスピード感のある研究開発や、社長・研究者・知財部が一体となった意思決定を活かし、いち早く新薬を開発してマーケットを勝ち取ろうという戦略を展開している。

・アカデミックな価値とビジネス上の価値の両面を意識

同社での活動は大学との共同研究が基盤となっているため、大学や教授との調整が不可欠となっている。たとえば教授が自身の発明を論文化しようとする際、事業化の面からはまだ公表できない内容が含まれているケースが非常に多い。そのような課題がある中でも、同社は、双方のニーズをもとに緻密な連携を図れば、Win-Winの関係が構築することが可能と考えている。そこで同社では、知財担当者自らが教授や大学側の担当者とコミュニケーションを密にして技術や知財について互いに理解しあい、特許の出し方や論文発表のタイミングなどを適宜調整するようにしている。

・実施権の選択に猶予をもたせた契約

同社では共同契約締結時、創薬事業としての特徴・リスクを念頭に置いた柔軟な契約をお願いしている。これは、機能性ペプチドという研究テーマの特性上、出願後すぐには実施権の判断ができないためであり、そのかわり、出願や権利を維持するためのコストは100%同社側で負担している。

3. 活動体制知財担当を中心に、社内や大学関係者と密接に協議

同社では弁護士出身の社長の下で、医薬経験を持つ法務・知財部長が中心となって知財活動を展開している。大学との共同研究が基盤となるため、知財部長自ら教授や大学側のTLOやURAと協議を重ねて技術の核を理解し、社外リソースを活用しつつ明細書を仕上げていく。日々進捗する研究状況に柔軟に対応するため、社内中心での対応としている。

4. 活動の変遷大学との連携に並行し、市販品展開時のノウハウを習得

同社の知財活動は、事業化に向けて必要になる知財知識を大学側と共有することからスタート。その後、大学側との論文発表における公表範囲の調整や、出願内容の調整などを中心に活動している。また、第二の事業として展開する化粧品の開発当初は、社員全員が製薬業界出身のためノウハウがなく苦戦したが、経験者を採用し、ブランド(商標)や使用感などトータルでの価値で顧客に訴求を図る工夫を進めている。

5. 知財の活用ライセンス供与をビジネスモデルの主軸に位置づけ

・ライセンスアウト

製薬企業とのパートナリングを行いライセンス供与を行うことが、同社における事業の中心となっている。

・資金調達

知財戦略はベンチャーキャピタルによるデューデリジェンスのキーになる部分だと感じている。ベンチャーキャピタルにも説明可能な知財の形成を積極的に推進している。