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一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集

IT

02:株式会社One Tap BUY(ワンタップバイ)
~金融業界で特許を活用し、日本唯一の企業へ~

会社紹介

日本初のスマホ証券として、2016年6月にサービスを開始。わずか1,000円でリアルタイムに株式投資できる仕組みや使いやすいインターフェースを基盤にして、「何よりも簡単」で「最も使いやすい」証券会社をめざしている。

主な製品・サービス

・アプリ「One Tap BUY」

スマートフォン上から1,000円単位で気軽に株式投資を楽しむことができるアプリ。一般的な証券会社で必要となる、株数、成行、指値などの入力が不要。投資先の企業と金額を決めるだけでリアルタイムに売買を成立させることができる。

また、利益分のみ売るという業界初のシステムも導入し、特許を取得している。

・アプリ「積み株」

ユーザーが自身にあったスケジュールを設定すると、自動的に株の積み立て購入ができるアプリ。1,000円単位から購入可能で気軽に積立投資ができる。

1. 事業方針日本初の独自サービスを展開・拡充

同社は日本初のスマホ証券として独自のサービスを構築し、市場の先陣を切ってきた。このビジネスモデルは大企業からも注目を集め、ソフトバンク株式会社やみずほ証券などからも投資を獲得している。

同社ではこれからも日本唯一の商品としての地位をキープしながら、ユーザーのさらなる獲得や市場の開拓、新たなフィンテックを導入したサービスの拡充をめざしている。

2. 知財戦略大企業からの防御のために、可能なかぎりの特許を取得

・大企業の追随を警戒し、特許を積極的に取得

一般に金融業界では「商標はあるが特許はない世界」という言葉があるほど、金融商品の競争力・独自性をテクノロジー面を軸に構築することは難しいと考えられている。それゆえ、大企業のブランドやマーケティング力を背景とした事業展開が中心となっている。しかし、同社では、金融業界でもテクノロジーを軸とした独自性・競争力の強化が可能であると創業当初から考え、起業時点から積極的に知財戦略・活動を意識。創業当時から、特許になりそうな技術を契約する弁理士へすべて展開し、可能なものはすべて権利化するという方針をとっている。そのため、年間予算をしっかり管理しながら多くの資金を出願用に割くようにしている。大企業が豊富な資金を活かして同社のサービスに追随してこないように、徹底した防御を意識した知財戦略をとっている。

・将来のビジネスを想定して海外でも出願

同社では日本国内だけでなく、海外での出願も展開している。これは、すぐにでも海外で日本と同様の金融取引をめざすということではなく、現地の証券会社がインターフェースを利用したいという依頼があった場合に、ライセンスとして貸与することを想定したもの。本格的な海外展開には相応の事業基盤が必要なため、まずは段階的な展開としてのライセンスビジネスを見据えている。

※「スマホ証券」「積み株」「One Tap BUY」及びロゴは、株式会社One Tap BUYの登録商標です。

3. 活動体制ビジネスドリブンで主導する特許出願

同社では管理部が特許の管理を行っている。実際の出願にあたっては、起業前から付き合いのある弁理士と連携。大手の弁理士を紹介されることもあるが、長年の連携関係にある弁理士の方が同社の事業やベンチャー企業ならではの制約に対する理解も深く、柔軟に依頼に応えてくれるため、メインで頼りにしながら、案件に応じてそれぞれ活用している。

また、同社では社長からはさまざまなアイデアがビジネスドリブンなかたちで投げかけられる。知財担当者は、こうしたアイデアとCOO率いるシステム部内で定期的に行っている技術動向調査の情報を照らし合わせたうえで、ビジネスの可能性を弁理士と相談し、特許出願を判断している。

4. 活動の変遷以前の創業時の失敗を糧に積極的な知財活動を展開

同社の社長は、株式会社One Tap BUYの創業以前にも、一度証券会社を起ち上げている。この証券会社時代には、外国株と日本のユーザーを直接つなぐ技術を独自開発。従来は証券会社が自社で購入した株を介してユーザーと市場をつないでいたが、この技術はユーザーから直接外国株の売買を可能にする画期的なシステムだった。

しかし、このサービスを市場投入すると、特許取得していなかったこのサービスは次から次に競合に追随される。すぐに市場のスタンダードとなってしまい、独自性が失われてしまったという失敗を経験している。この経験をもとに、同社は創業時から積極的に特許を取得。他企業からの模倣を防ぐための知財活動を積極的に展開するとともに、特許取得済技術という点がマーケティングにおいて利用できる場合がある。

5. 知財の活用大企業からの協業オファーや出資を獲得

・大企業も意識した参入障壁の形成

自社が大きく成長したフェーズも意識し、大企業からの模倣の防衛策として多数の特許を取得したことにより、同アプリケーションについて強固な参入障壁が形成。結果として、大企業側が同社と連携してビジネスを展開していくことを目指した数々の協業オファーの声がかかるようになってきている。まずは国内唯一の企業となることをめざしてきたため、自社特許を活用したライセンスビジネスの展開は日本国内では想定してこなかったが、こうした企業との協業も今後の展開として検討している。

・大企業からの出資獲得

同社ではベンチャーキャピタルの他にも、ソフトバンク株式会社やみずほ証券株式会社などからの出資も獲得している。こうした大規模な出資において、事業拡大前にコアな技術を権利化しているかどうか確認される。

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