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一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集

電気一般

03:セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社
~世界に通じる知財戦略で大企業とも協業~

会社紹介

「世の中にないモノを創り出す技術集団」として新しいライフスタイルを切り拓くグローバルブランド。1957年創業のスーパーレジン工業から発展し、「太陽の塔」の制作や「はやぶさ」をはじめとする宇宙航空開発に携わるなど高い技術力を武器にしている。

主な製品・サービス

・カーボンゴルフシャフト

宇宙衛星開発技術を活かした3D測定システムによる完全オーダーメイドの高性能ゴルフシャフト。

・ナステント

鼻にソフトなチューブを挿入することで気道を確保する新しい発想で開発された一般医療機器。

・ランドロイド

衣類の山を放り込むだけで全自動で折り畳み、衣服の仕分けまでしてくれるAIを搭載した新発想クローゼット。パナソニックと大和ハウス工業と共同開発を進めている。

1. 事業方針技術を武器に 「世の中にないモノ」 をつくり出す

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社では自社の武器を技術力にあるととらえ、研究開発活動に大きな力を注いでいる。研究テーマの選定にあたっては、以下3つの基準から特許や市場調査を活用したスクリーニングを行った上、新たな事業創造に挑戦している。

研究テーマのスクリーニング3基準

  • 世の中にないモノ・サービスであること
  • 人々の生活を豊かにすること(BtoC分野のため消費者ニーズを重視)
  • 技術的なハードルが高いこと(競合他社が簡単に実現できないように)

2. 知財戦略権利化と秘匿を慎重に使い分け

同社では特に出願件数の目標を設定しているわけではないが、知財権で事業を守るという意識は強く、以下2段階のプロセスを知財戦略の核にして活動している。

・①「新規性のあるテーマ」を見逃さない

社長自身が技術開発進捗会議のほとんどに出席することで、特許になりそうなテーマをすべてフォロー。知財を担当するメンバーと共有しながら、特許網を張り巡らせている。

・② テーマをどのように出願するか or 秘匿するかを判断

仮に他社から知的財産権を侵害された場合に、その侵害を暴けるものは徹底的に権利化し、暴けないものは秘匿化するというポリシーをもっている。もちろん、自社技術が盗用された場合には争っていくが、必ずしも特許が完璧な防御になるわけではないので、技術を盗まれないために権利化と秘匿化を慎重に使い分けるという方針をとっている。

また、同社では海外への特許出願についても積極的に展開。重要な技術についてはほぼ100%PCT国際出願を行っている。出願国については知財課と社長で相談のうえで決定しているが、どの国でも権利化されていない技術については、より多くの国で出願する方針をとっている。しかし、その際には他社動向を常にウォッチしながら分割出願を繰り返すなどの工夫をしている。

3. 活動体制独自知財によって成立したアライアンス先大企業と連携

同社はランドロイド開発においてパナソニック(株)、大和ハウス工業(株)とアライアンスを締結。パナソニック(株)の知財部門とは幅広い連携をして知財に関する知見を得ている。アライアンス締結時の契約書は、弁護士のアドバイスを得ながら文言を徹底的に検討した。その結果、他社から驚かれるほどの連携スキームを実現できている。

4. 活動の変遷権利侵害をされた経験から学んだ徹底的な知財活動

同社の積極的な知財活動の背景には、特許技術を大手他社に模倣されてしまったという社長自身の苦い経験が存在している。出願した製造特許明細を他社に閲覧され、無断で利用されたことを弁護士と弁理士とともに付きとめたものの、係争・和解の結果得られた対価はスズメの涙程度。これ以降、技術の権利化と秘匿化を選ぶ慎重な判断も含め、徹底的な知財活動を行うようになった。

5. 知財の活用参入障壁の保持に加え、資金調達やイコールパートナーシップ締結に寄与

・活用方針

同社の知財は製品の独自性と参入障壁を高く保つことを第一の目的として活用してきた。しかし、取得した知財は結果的に事業性評価の担保となるため、資金調達に寄与するという副次的なメリットも生み出している。また、大企業とのアライアンス締結も、知財活動の結果実現することができた。

・ライセンスアウト

ラインセンスアウトについては、それ自体を目的とした技術開発には積極的ではない。しかし、資金調達やオープンイノベーションの加速という視点から、相応の価値を得られるメリットがあると判断した場合には実行している。また、独占販売権の付与というかたちでのライセンスアウトも実行している。同社では研究開発投資の比重が大きいビジネスを展開しているため、グローバル市場のなかでも限られた高付加価値市場を対象に製品・サービスを展開していく必要がある。そのため、自社だけでカバーができない欧米や中国などの海外マーケットにおいては、独占販売権を与えることでより効率的な販売網を確立させている。

・ライセンスイン

技術を保有したパートナーに発注するかたちで利用。QCDにこだわって調査し、最適なパートナーを選択している。

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