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一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集

電気一般

05:FLOSFIA(フロスフィア)
~ベンチャー企業の規模を活かした出願内製化とすばやい意思決定~

会社紹介

グリーンかつクリーンな技術を用いてイノベーションを誘発し、社会に貢献する製品をつくりだすベンチャー企業。京都大学との共同研究を進めながら、新規材料の応用開発とどこよりも早い事業化を推進している。

主な製品・サービス

・ミストドライ™法

京都大学で開発された技術をさらに発展させた成膜手法であり、同社事業の核となる技術。霧(ミスト)状にした溶液を用いて、金属酸化膜や金属膜、有機膜などさまざまな薄膜を成膜できる。この技術を応用した事業として、以下二つの事業を進めている。

・酸化ガリウム(Ga2O3)を用いたGaO™パワーデバイス

ミストドライ™法を活用し、シリコンやシリコンカーバイドよりも電力損失の少ない次世代型パワーデバイスの開発を進めている。

・成膜ソリューション事業

ミストドライ™法を用いて形成した多種多様なプロセスを、さまざまな応用分野に展開するソリューションを提案。さまざまなアプリケーションに合わせた金属酸化膜、金属膜、有機膜を提供する。

1. 事業方針大学で生まれたコア技術をいち早く事業化へ結びつける

同社は京都大学で生まれたミストCVD法をさらに発展させ、二つの事業を展開。大学で生まれた発見をもとに同社で事業開発を推進し、世界で初めて、工業化できるレベルの半導体膜をつくることに成功するなどの実績を上げてきた。成膜ソリューション事業ではすでに事業を受託しているが、パワーデバイス開発はまだ先行投資の段階であり、世界をリードできる事業とするべく、工業化と量産化へ向けてスピーディな開発を進めている。

2. 知財戦略戦略的なパテントマップをつくり、量と質で勝負

同社では、大企業とも渡り合っていくために綿密な知財戦略を構築。直近では、現在開発を進める新素材パワーデバイスを世界中のどの企業よりも早く製品化し、市場をリードしていくためにはどうすればよいかという視点に立って知財戦略を展開している。

・戦略的なパテントマップと特許の俯瞰図を作成

同社では大企業の知財戦略にも渡り合っていくために、まず特許件数を重視。年間目標を立てて200件を超える特許を出願している。しかしコスト的な面からも量だけに頼ることはできないので、定性的な面からもアプローチ。戦略的なパテントマップをつくり、ポートフォリオでも特許の俯瞰図を作成。そのうえで、ベンチマークとなるベンチャー企業や海外の企業などをウォッチしながら、とるべき対応策を一つ一つ抽出して実行している。

権利化にあたっては、知財に長けた外部コンサルタントとも連携しながら、権利化の方針を社内で迅速かつ丁寧に決定している。権利化の際に、効果的な特許を選ぶ「目利き」を機能させることで特許の効果を最大化。競合が警戒して開発できないような高い参入障壁を構築している。

・技術に習熟した社内スタッフ陣が出願書類を作成

同社では、国内外の実務経験豊富なベテランスタッフから弁理士試験に合格したスタッフまで知財専門のスタッフが在籍。定期的に技術ミーティングを開いてこまめに全研究員・全技術者から報告を受けることで、権利化の判断をスピーディに行うことができている。また、自社の技術に精通した社内スタッフが出願書類を書くことは大きな利点となり、事業戦略にかなう強い特許をタイムリーに作成することができている。

・大学等と連携した特許出願

同社では、半導体の事業化に向けた技術は、自社で研究開発を実施し、単独で出願しているが、基礎的な技術などについては、大学や国立の研究機関と連携し、大学や国立の研究機関と共同研究した部分を共同出願するようにしている。

3. 活動体制大胆に内製化を進め効率的な知財活動を展開

同社では社内に知的財産部を設け、知財戦略設計から出願まで一気通貫した知財活動を実施している。現場に常駐して技術を習熟した人間がタイムリーに出願を行うことで、強い特許を取得することができている。また、定期的なミーティングを開き、研究員や技術者全員から報告を受けることで技術シーズをいち早く把握。知財部からも提案がなされることで効率化を推進。徹底的な意思疎通を図り、大企業では難しい柔軟でスピーディな特許出願へ結び付けている。

4. 活動の変遷大手特許事務所との契約ができず、内製化へ舵をきる

同社では創業当初、より強い特許取得をめざして大手特許事務所との契約を試みるが、「大手事務所の既存クライアントとの競合が起きる」という理由で断られてしまう。これをきっかけに内製化を試み、当初は社長自らが書類を作成し、特許事務所と組んで出願していたが、知財専門の人材を募集。幸運にも優秀な人材を確保することができた。以降、同社ならではの効率的な特許取得体制を実現している。

5. 知財の活用パートナー探索等に特許情報活用、資金調達やイコールパートナーシップにも寄与

・事業パートナー候補を見出すツールとして特許情報を活用

技術シナジーを生むパートナー候補企業の抽出に特許情報を活用。特許庁のマッチングレポート実証研究事業に協力し、自社の特許情報を基に分析して技術シナジーを生むパートナー候補企業を抽出した。抽出結果には既に引き合いのある企業や全く想像もしていなかった企業も含まれており、これらをマーケティングや異分野連携に活用することに成功した。同社では、今後も特許情報の活用に取り組んでいく予定である。

・参入障壁の保持に加え、資金調達やイコールパートナーシップ締結に寄与

将来の大きな収益を確保するため、強い特許を数多く戦略的に取得することで参入障壁を高くし、競合他社が無視できないようにしているが、これに加えて、資金調達や事業提携にも知財が役立っている。ステークホルダーや提携先からは、基本特許の有無や、要所を押さえた特許を取得しているかを問われるが、同社では知財の専門スタッフが常駐し要所をおさえた明細書を書いているため問題なくクリアできている。

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