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一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集

バイオ
(医療機器)

09:株式会社ユニバーサルビュー
~「世界初」の製品化に向けた防衛策と知財の活用~

会社紹介

『「見える」で世界にイノベーションを。』を合言葉に、
眼科分野に特化した医療機器を中心に取り扱う開発型ベンチャー企業。

主な製品・サービス

・オルソケラトロジーレンズ

就寝時に装用することで角膜の形状を矯正し、日中は裸眼で生活することのできる視力矯正用のコンタクトレンズ。アメリカでは活用が進んでいたが、同社では平坦な日本人の目に合致したレンズ「ブレスオーコレクト®」を開発し、医療機関へ商品展開。コンタクトレンズの装着やレーシック手術を受けることができない子どもたちへ多く活用されている。

・ピンホールコンタクト

病レンズに小さな穴を空けたレンズ。度は入っていないが、小さな穴を通すと近くも遠くもよく見える「ピンホール原理」を利用し、近視、遠視、老眼のすべてに対応することができる。実用化されれば、世界初の製品となる。さらに現在、この技術を応用し、インターネットとつながるウェアラブルデバイス「スマートコンタクト」の開発に向けて取り組んでいる。

1. 事業方針世の中で実際に活用されるシーンまでを見据えた開発

同社では、ベンチャー企業が新しい市場へ入っていくためには普及までのサポートが必要と考え、さまざまな方策を展開。たとえばオルソケラトロジーレンズの初回処方時には、60枚以上あるレンズから患者さん一人ひとりの目に最適なものを選ばなくてはいけないが、その手間とコストをカットできるようなアプリを独自に開発。スタッフでも数値を入力すれば、簡単に最適なレンズを提示できるようなシステムを医療現場へ提供している。また、医療関係者への浸透だけでなく、一般ユーザーへ向けた広報・広告戦略にも積極的に取り組んで製品普及へ注力。研究開発から知財の取得はもちろん、製品としてどう活用されていくかというところまで考えた事業を展開する。

また、創業当時は多角的に広げていた事業と特許を数年前に整理。選択と集中を行うことで、ベンチャー企業としてふさわしい事業規模に絞り込み、同社のコア事業となるオルソケラトロジーレンズとピンホールコンタクトへの資本を集中し、知財の拡充を図っている。

2. 知財戦略「世界初」 を実現させるための知財活用

・世界初の製品開発のための徹底した防衛

同社ではピンホールコンタクトを世界で初めて製品化するために徹底的な防衛策をとり、世界の主要国のほとんどで特許を取得。コア技術を取得したうえで周辺特許の拡張を進めている。

・承認が必要な医療機器ならではの知財活用

取り扱う製品が医療機器であるため、安全を確保するためにも治験を繰り返して、国からの承認を獲得する必要がある。承認までには長い時間が必要となるため、当然その間には他社から真似をされるリスクも生じてくる。そのために防衛策として知財を活用することはもちろん、場合によっては他社へライセンスアウトして製造させていくというビジネスモデルも想定している。

3. 活動体制専属スタッフが在籍し、タイムリーに知財化

同社では国際特許事務所での経験をもつスタッフが在籍。特許の出願文書は、すべてそのスタッフが記述して申請している。社内に専属スタッフが在籍することで、技術開発の進展や世界の情勢へタイムリーに対応した特許を短期間で出願することが可能になっている。

4. 活動の変遷製品開発時から知財を有効活用

同社のオルソケラトロジーレンズ開発には、東レ(株)が所有する丈夫かつしなやかな医療用素材が必要不可欠だった。しかし、素材使用のためにドアノックを試みるものの、創業当初まだ実績も少ない同社への反応は、当然芳しくない。そこで、知財の獲得して信用を獲得するとともに、あらゆる伝手を通じてコミュニケーションを図ることで、素材購入に成功した。

その後、レンズ開発も軌道に乗り始めたもののリーマンショックが発生。出資先が撤退してしまうという困難に直面する。そのときにも活きたのが知財だった。東レ(株)に国内販売権を提供することで出資を得ることに成功。これが大企業による商品の評価という信用にもつながり、ベンチャーキャピタルからも出資を獲得できた。

現在ではピンホールコンタクトの基本特許を活かして周辺特許を拡張し、インターネットとつながるスマートコンタクトへの展開も考え、メディカル以外の領域にも踏み出している。

5. 知財の活用信用獲得や資金調達に大きく貢献

・大企業との対等なコミュニケーション

同社では東レ(株)をはじめ、さまざまな大企業とビジネスを展開。知財によって企業の信用を獲得し、対等な交渉ができることが大きく寄与している。

・独自の技術について徹底した知財保護

同社では世界初の商品化をめざしてピンホールコンタクトの開発を進め、世界各国で特許を取得していたが、韓国のコンタクトレンズメーカーが同社の特許と同じ内容の特許を取得するという事態が発生。2年間係争して勝訴した。徹底的に戦うことで知財を顕在化し、他の競合企業へも牽制ができると鑑みて最後まで戦い抜いて知財を守った。

・資金調達

資金調達にあたっては、知財の保有が大きく役立っている。特に産業革新機構のデューデリジェンス時には知財について詳しい調査が実施された。このときに共有いただいたフィードバックが知財戦略に大きく役立っている。

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