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一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集

IT/バイオ
ドイツ

14:Mimi Hearing Technologies GmbH
~ライセンスビジネスに向けた知財マネジメントの強化~

会社紹介

ベルリン発のベンチャー企業。人間の聴覚の複雑な機能のプロセスにインスピレーションを受け、各人の聴覚にあわせて音楽の周波数を最適化する技術を開発。オーディオやヒアリング化学の領域で長い研究経験をもつ代表を中心に設立された。

主な製品・サービス

・Mimi personalization software

一人ひとり異なる聴覚にあわせて、音楽を最適な周波数で提供できるソフトウェア。世界からも広く注目を集めており、ForbesやWIREDなどからの取材も受けている。

本テクノロジーは現在、さまざまなOSやハードウェアと統合され、開発キットとして広くライセンスをオファーしている。 すでにドイツのマイクロホン/ヘッドホン・メーカーであるbeyerdynamic社などと連携した製品開発も進められている。

1. 概要ライセンスビジネスを想定し、社内体制の整備も含めた知財戦略を展開

・プロダクト開発の途中で、特許の重要性を実感

創業当時の同社は、まずはプロダクト/マーケット・フィットの達成に専念して製品の完成を急いでいたため特許取得には着手していなかった。しかし翌年、特許取得フローを確認する目的で実験的に特許申請を行ったところ、その過程で特許取得の重要性についての理解が深まり、また申請に時間を要することに気づき、特許戦略の重要性を実感。ライセンス販売を行うビジネスモデルを展開するため、技術を守ることが重要であることをボードメンバー全員が改めて認識し、オーディオ業界に強いIPエージェンシー(知財を専門とするコンサルティング代理店)とコンタクトをとって知財戦略を展開した。

・インハウスで専門家を確保

さらに同社では、自社研究開発チームと連携するためにインハウスの専門家を確保。ライセンス関連業務や特許事務所で働いていた経験をもつメンバーを雇用することで、特許申請を加速させている。さらに今後は、このメンバーを中心としてIPの重要性をさらに社内へ浸透させる取り組みを検討しており、社内インセンティブ制度の整備やワークショップ型のセッションの開催などを考えている。

・ライセンス提供を通じた企業との連携

企業との連携はすでに多数の実績があるが、現在はまだ同社技術のメリットを提示し、ユーザーエクスペリエンスを高めるための試験的な導入を進めている段階にある。そのため、企業との連携はすべてライセンス提供というかたちで進めている。しかし、今後の展開によっては、同社の特許権、及びライセンスを買収したいという提案もあり得ると想定している。同社では、この可能性も見据えたうえで積極的に特許を取得。特許取得済みであることは、技術について計画的に扱っていることの証明になるうえ、他社から技術模倣からの防御にもつながるため、本技術の信頼性を確保することになると考えている。

2. 知財の活用知財に取り組む社内体制が資金調達時のポイントに

・資金調達

アーリーステージのベンチャー企業では、知財よりもマーケットへの適合性やユニークな技術の有無に関心が寄せられることが多い。知財は、ある程度の評価を得たあとの大規模な資金調達時に力を発揮する傾向がある。ドイツではその際、知財を担当する人材を雇用していることは知財を重視していることの証明ととらえられ、大きな審査ポイントになると考えられている。

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