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一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集

電気一般
ドイツ

15:BigRep GmbH
~積極的な外部連携でイノベーションを推進~

会社紹介

工業用3Dプリンター機器を開発するベンチャー企業。2014年にベルリンを拠点として創業された。

3Dプリントと製造ビジネスに変革を起こすために事業をつづける同社は、機器を開発するメカニックという側面だけではなく、デザインカンパニーとしての性格も持ち合わせており、プリントのために必要なアプリケーションやマテリアルの開発も行っている。

主な製品・サービス

・BigRep ONE

1㎥のデータを作成することができる大型3Dプリンター。従来の3Dプリンターでは困難だった原寸大の大型部品のプロトタイプの作成を可能にし、すでに全世界で製品を販売している。製品のデザインは2016年にドイツデザイン賞を受賞しており、デザイナーのアトリエ等でも使用されている。

1. 概要連携先と共同出願のうえ、プロダクトを市場投入

・外部連携によりプロダクトを開発

同社はもともと、オランダ応用化学研究機構(TNO)、Philips系企業、フラウンフォーファーIPA、BeuthUniversityなどと研究を進めるなかで事業性が見出され、創業に至った経緯がある。そのため、外部機関との連携は頻繁に行われており、2017年11月には化学企業のBASF社などとの連携も実現している。

知財は市場に出す見通しのもとに提携先と協議し、共同で特許を取得。特許を取得しただけでは売上につながらないため、製品化して市場に出すことで売上につなげている。製品化こそが、大学や研究機関側が同社と連携するメリットにもつながるものであり、同社のミッションでもあると考えている。

・インハウスにIP Lawyerを配置

同社ではCFOのアイデアにより、社内にIPカウンシルを設置。特許弁護士を一人インハウスに抱え、知財業務に関する知見を活用して、社員が誰でもIPを提案できるシステムを確立している。社員がアイデアをIPカウンシルに提案すると、IPカウンシルはフォーマルなプロセスに沿ってIP申請を検討する業務フローを社内に確立した。特許の出願申請、社内フローの整備の他、取得済のIPについて、ファイリングも行っている。

・秘匿化戦略は行わず、技術をシェア

同社では基本的に技術をオープン化。自社の保護のため模倣のリスクがあるコア技術を特許化するものの、同時に秘匿化戦略はとらず技術をシェアすることこそが、市場の成長を促進し、イノベーションを効率的に加速させていくために必要だと考えている。ライセンスイン/アウトについては、特に検討していない。

2. 知財の活用資金調達を受ける戦略的パートナーと知財活動を協議

・戦略的パートナーとファイナンスパートナー

BigRep社における出資者は、戦略的パートナーと、ファイナンスパートナーに分かれている。戦略的パートナーからはIPを含めた企業戦略についてアドバイスされることがあるが、ファイナンスパートナーはIPの有無について特別重視することもなく子細なアドバイスは提供しないことが通常である。

戦略的パートナーとしてBASFなどから支援を受けた実績があり、ドイツにおける出資者は特許の数だけではなく、技術のユニークさとマーケットの有無について中長期的な視点で査定することが多いので、質の高い特許を取得する方針となる。

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