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一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集

電気一般
ドイツ

16:SINN POWER GmbH
~他プロダクトへの転用可能性を見据えた特許取得~

会社紹介

波力発電用設備を開発するドイツのベンチャー企業。BMWi(ドイツ経済エネルギー省)の支援を受けてギリシャで実証実験を行い、現在ver.2.0の技術を開発している。

主な製品・サービス

・Wave energy converter (WEC) arrays / modules

フレキシブルに分解・組み立てができる独自のモジュールを組み合わせて設計された波力発電設備。大型の設備は設置しにくいような場所でも、モジュールを一つひとつ組み合わせていくことで柔軟に設置することが可能。エリアの形状や特性にあわせたモジュールの配置によって、生み出す電力を最大化させていくことができる。導入コストやメンテナンス費用の負担が少ないことも、大きなベネフィットになると期待されている。

1. 概要エネルギー業界の開発スピードを鑑みて、転用可能な技術を中心に保護

・大企業からの技術保護を意識

同社が特許を取得する主な目的は、大企業から自社技術を保護することにある。新エネルギー業界ではそれぞれの企業が異なるアプローチから技術開発を行ってリソースを集中投下しているため、他社が技術模倣することがスピード面から起こりにくいと考える一方で、知財保護及び将来的な他社からの訴訟リスクを回避するためにも特許を取得している。

・他のプロダクトに利用可能な技術を優先的に保護

同社ではCEOが中心となり、エンジニアと協力しながら特許申請する技術を発見・決定している。その際、特に他のプロダクトへの転用を見込むことができる技術については優先的に特許を取得。将来的な展開を見据えながら特許出願を行っている。

・大学側との特許権の住み分け

同社のエンジニアリングチームには、大学から多くの若手研究者がインターンシップとして研究に参加している。これにより学生の責任者である教授との利害関係も生じるため、特許出願を行う際には特許権の所在が曖昧になることが多い。そのため、事前に契約を締結することでトラブルを回避するようにしている。また、大学側とはNDAを締結し、自社技術を守っている。

2. 知財の活用ドイツ政府によるベンチャー支援プロジェクトを活用

・政府が主導する経済開発プロジェクトから資金調達

同社では創業時のアイデアと知財をもとに、BMWi(ドイツ経済エネルギー省)のベンチャー支援を受けており、政府によるネットワーキングによって国外で実証実験を継続している。

経済エネルギー省(BMWi)による支援

支援の獲得にあたっては激しい競争があるが、BMWiから受けられる支援は多岐にわたる。情報提供プログラムと研究開発プログラムの2本柱を中心に、さまざまなプログラムが提供されている。特許取得をテーマとした情報提供会議も定期的に開催され、知財に関心のある人間同士の交流の場となっている。SINN-Power社が受けた研究開発プロジェクトでは、ビジネススケッチの審査に通過しプロジェクトが採択された後、研究成果の公表が求められる。この助成を受けた研究成果について特許出願し権利関係を明朗にするには、事前に関係者間での契約を取り交わす必要がある。

その他にBMWiは、例えばBayStartupのような州と協力したミートアップイベント等を援助したり、KfW(国営金融機関)との共同ファンドでハイテクベンチャー企業に投資するなど、支援を拡充しつつある。

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