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第10回●「ファーストアクション」とは?
【シンプルに表すと?】
審査官から出願人等へ審査結果の最初の通知(主に特許査定、登録査定または拒絶理由通知書)が出願人等へ発送されること。通常の特許審査ではファーストアクションまでに約9ヵ月かかるが、早期審査は約3ヵ月、スーパー早期審査では約1ヵ月に短縮できる。
「ファーストアクション」とは何でしょうか?
IP BASE:特許が審査されるには、出願に加えて審査をしてほしいという請求を特許庁に対して行う必要があります。この審査請求を受けて、審査官から出願人へ一次審査の結果通知が出されることがファーストアクションです。審査官から出願人宛にお手紙がくると思ってください。
通常どのくらいの期間がかかるのでしょう?
IP BASE:審査請求をしてからファーストアクションまでは平均で9ヵ月くらいです。最初の審査の結果が特許査定であれば「特許にできます」という内容、そうでなければ、どうして特許にならないかという理由を説明した拒絶理由通知が届きます。
えっ、9ヵ月間も待つのですか……?
IP BASE:そうです。ただし、スーパー早期審査だと、これが1ヵ月になります。
スーパー早期がなかったときは、皆さん、ずっと待っていたんですね……。
IP BASE:それ以前も、条件を満たせば3ヵ月に短縮できる早期審査がありましたが、スタートアップが製品の発表や資金調達のタイミングに間に合わせるには、より早いほうがいい。そこでスタートアップ向けに利用しやすくしたスーパー早期審査が創設されました。
実際に、スーパー早期審査での出願は増えていますか?
IP BASE:スタートアップ向けの制度が2018年7月からスタートして、1年足らずで約120件利用されています。やはり製品の発表時や資金調達時に、特許を取っているというのは、強いアピールになりますし。スタートアップにとって、リリースの9ヵ月前から特許取得の準備をするのは難しいですが、1ヵ月なら開発のスケジュールとも合わせやすい。
逆に、早く出し過ぎるデメリット、注意点もありますか?
IP BASE:出願に関しては、本来はもっとよく考えたほうがいいのに、安易に急いで出してしまっているケースが中にはあります。特許を出願すると、その内容は公開されます。すると、そこからさらに発明が改良されたときに特許を取ろうとしても、自分が先に出願した特許によってつぶされてしまう可能性があるのです。また審査請求に関しては、商品やサービスが固まらないうちに権利範囲が決まることで、せっかく取得した特許が、実は事業を守っていないという事態になることもあります。
改良発明の特許に求められる新規性、進歩性がなくなってしまうと。
IP BASE:まだ改良する余地があり、今すぐに権利が欲しいのでなければ、他者との開発競争の状況を見つつも、慌てずにしっかり特許の内容を検討してほしいです。特許の有効期間は出願から20年あるので、フルに活かせるような特許にしましょう。