AI編
AI編
個人情報を含む場合のAIソフトウェアの開発の留意点
業種や業務、技術カテゴリーなど分野別の知財戦略を専門家にヒアリング。
当該ジャンルの起業・スタートアップに必須の基礎的な知識をお届けします。
テーマ:AI
工場の稼働データの分析、道路・建築物の写真データに基づく劣化分析等では、一般的には、個人情報の問題は生じません。他方、ウェアラブルデバイスやカメラ画像等の収集データ、ECサイトにおける購買データ、人事データあるいは医療データを分析するなど、AIスタートアップがソフトウェアの開発やサービスを提供する過程で個人情報を取り扱う場合、個人情報保護法の規制内容を把握しておくことは重要です。
よくある誤解として、「個人情報を取得する際に同意の取得が必要である」というものがあります。しかし、医療データなどの要配慮個人情報を取得する場合を除いて、個人情報の取得には同意の取得は必要ではなく、その利用目的の通知または公表が原則として必要です。
また、AIスタートアップがベンダとして、ユーザから個人データの提供を受ける場合には、原則として、提供者本人から第三者提供の同意を得たうえで、提供に関する一定の事項を記録する必要があります。
このとき、ベンダがユーザから個人データの取り扱いの「委託」を受ける場合には、第三者に対する提供にあたらず、これらの義務は課せられません。そのため、実務では、委託構成を利用することが少なくありませんが、委託による場合には、委託の目的や委託元の利用目的を超えた利用ができないことや、受領した個人データをベンダが有する他の個人に関するデータと突合をすることはできないことに注意が必要です。
なお、カメラなどによる画像データに関しては、ユーザがベンダに対して個人データの収集および分析を依頼し、その分析結果のみをユーザに返すスキームであれば、ユーザによる個人データの取扱いはない、との見解に接することは少なくありません。
しかし、このようなスキームでも、契約上ベンダによる取得データの利用に制限がある場合などは、「ユーザが個人データを取り扱っていると判断」され、利用目的規制の適用を受ける可能性があることには注意が必要でしょう。カメラを用いた顔認証サービスにおける個人情報の取り扱いについては、総務省の「カメラ画像利活用ガイドブック」が参考になります。
なお、個人情報の取扱いは非常に専門性が高い分野なので、ビジネス上その取扱いがある場合には、同分野に強い弁護士に相談することをお勧めします。