文字の大きさ

English
  • IP BASE

SaaS連載

テーマ:SaaS 第1回
講師:大野総合法律事務所 弁理士 酒谷誠一氏
SaaS系サービスは、サーバー側の処理だけでなくユーザー端末側の処理の特徴を権利化しよう

講師:大野総合法律事務所 弁理士 酒谷誠一氏

SaaS系サービスは、新しいビジネスモデルに基づいて提供されるものです。SaaS系サービスは多くの場合、サーバーで処理をした結果を、ユーザー端末のWebブラウザーやアプリ画面に表示することによって提供されますが、新規な点はサーバーの処理自体にある可能性が高く、サーバーの処理を特許権利化することがよく行われています。しかし、サーバー内の処理は外部からは見えないため、競合他社が同じような処理を開発しても、特許権の侵害を立証することは容易ではありません。

 

SaaSサービスでの特許係争事例としては、2017年のFreeeとマネーフォワードの特許侵害訴訟が有名です。このケースは、Freee側のもつ勘定科目の自動仕訳に関する特許を侵害しているとしてFreeeがマネーフォワードを提訴したものですが、サーバー側の処理内容が異なるとしてFreee側の請求は棄却され、マネーフォワードが勝訴しています。

このように見た目はよく似た機能であっても、具体的なサーバーの処理としてはいろいろな方法を取り得るため、サーバーの具体的な処理を特許権利化しても回避されやすく、競合他社を排除することは難しいのです。一方、サーバーの具体的な処理に踏み込まずに特許権利化できれば回避が難しくなるのでよいのですが、先行技術との関係でそれが難しい場合もあります。

そこで、サーバー側の処理だけではなく、ユーザーの端末側の処理の特徴的な部分について画面表示にも絡めて特許権を押さえることが推奨されます。このように特許権を取得しておけば、競合他社による回避が難しい上、競合他社の侵害の立証が容易であるというメリットがあります。もしユーザー端末側の処理に特徴が見出せなければ、何か特徴が出せないかを弁理士と相談して、特許取得につなげてみてはいかがでしょうか。

UP