イベント告知・レポート
CIPO Night #03 CIPOのススメ(前編)で特許庁が登壇しました!
2019年6月6日、TECH PLAY SHIBUYAにて、CIPO Night #3 - CIPOのススメ(前編) - が開催された。
(左:iPLAB Startups 中畑氏、右:特許庁 貝沼)
まず、自身がCIPOでもあるiPLAB Startups中畑氏から、無形資産をポートフォリオ化し、企業価値につなげていくことでIP経営を促進することがCIPOの役目であること、超高速で新しい産業を興すスタートアップにとってもCIPOを設置することが非常に重要であることなどが語られた。
続いて、特許庁の貝沼から、企業価値における無形資産の割合が非常に増えていること、人材や設備等の有形資産が十分でないスタートアップは、企業価値のほとんどが無形資産になる場合も少なくないこと、一方でスタートアップを対象にしたアンケート結果によると、知財を経営資源として組み込んでいるのは全体の2割、知財が重要であると言われる医薬・バイオ業界でも5割に満たないことが語られた。続けて、知財権を取得する効果として独占・連携・信用があり、ネット記事やイベントにおいて実際にスタートアップが語ったこととして、例えば大企業との連携では製品が知財から見て大丈夫なのかが確認されるため知財がなければ提携はできないこと、また信用で言えば、確度が高い知財を取得したことで実際の出資に至った、逆に知財がなければ資金調達できなかったことが紹介された。また、知財に関心のあるスタートアップでも権利化で満足していることが多いが、事業戦略やマーケティング等の各種経営戦略とともに、オープンクローズ、参入障壁、パテントマップ等の知財戦略を検討する必要があることが語られた。
パネルディスカッションでは、投資家である株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズの今野氏をモデレーターとして、ベースフード株式会社の橋本氏、RABO,Inc.の伊豫氏、株式会社SmartHRの小嶋氏をパネラーに、IP経営を始めるタイミング、CIPOの役割とは、IP経営の具体的な成果など、幅広い話題について意見が交わされた。
ベースフードの橋本氏からは、経営会議の中で特許、商標などのIPの話が出ることが重要であること、主食のイノベーションの未来を予測してそれを自分たちで作っていく過程にIPがあること、IP戦略の効果の1つとして市場競合発生のスピードを遅らせることができることがあること、一方で、<誰に相談すれば良いか分からないこと、出願をしてもその後の事業の方針によっては当時の出願が機能しなくなる場合があること、スタートアップの思考を理解してくれる弁理士が少ないこと>など実際の動き出し時には難易度が高いのも事実であること、大手は特許をマシンガンのように出すがスタートアップに同じことはできないので、本当に意味がある知財を取ることが重要であることなどが語られた。
RABO,Inc.の伊豫氏からは、IPは、分かりやすくドラクエで例えると、メラゾーマ(圧倒的な攻撃力を持つ攻撃魔法)ではなく、スクルトやピオリム(チーム全体が強くなる補助魔法)のようなものだと思っていること、デバイスの製造で競うのではなく、デバイスが普及するほどデータが自分に集まるように知財化を進めていること、データ収集のインターフェースの敷居を下げてデータ分析を秘匿化していること、ただ知財権取得は手続きが複雑であり、書類の文言も専門家に翻訳してもらわないと分からないほど難しいことなどが語られた。
SmartHRの小嶋氏からは、企業が大きくなると部門に分かれて知財部門が隔離されがちであるが、しっかり経営に知財がコミットすることが重要であること、いつか追いつかれるという前提の下で知財によりポジションを確保すること、将来の開発の方向性に合わせて知財権を取得して開発のルートを確保すること、取得そのものが目的になってしまうと開発のルートにマッチしないことなどが語られた。
(パネルディスカッションの様子)