- エンジェル
- シード
- シリーズA
- シリーズB
- シリーズC
- CVC
- 大学
- ビジネスと知財の対応
落とし穴4:大学で出願した基本特許はあるが、商用化の観点から権利化されていない
よくあるケース
VCはある大学発ベンチャー企業への投資を考えていました。そのCEOの話では「大学で研究成果の基本特許を取得しているから大丈夫。」とのことで、VCは基本特許について内容を精査することなく、シードラウンドの投資を実行しました。
しかし後日、基本特許の権利内容を専門家に見てもらったところ、権利範囲が非常に狭く、ベンチャー企業が実際に実施している態様しか守られないものでした。
これでは、他者はほかの代替手段を使っていくらでも参入することができてしまい、使い物になりません・・・。
この落とし穴の類似パターン
- 大学発ベンチャー企業が「大学の基本特許がある」と説明していたが、市場国をカバーできておらず、国内の権利のみだった。
対策:大学発ベンチャーの事業範囲・用途・市場国をカバーする知的財産を確実に権利化する
ポイント1:大学の「基本特許」はベンチャー企業が事業を行うための基本特許ではない
大学による特許出願は、必ずしも大学発ベンチャー企業による事業化を見据えたものではない。大学が「基本特許を持っている」と言っても、ベンチャー企業が事業を行う上では十分でない可能性がある。
ポイント2:事業範囲・技術の用途、市場国、期限がカバーされているか
大学で出願された特許を確認する場合は、自社や競合企業の将来の事業範囲を見越したものになっているか、進出予定の国で権利化されているのか、特許の有効期限が十分残っているのか、などを確認することが重要である。素材やAIなど様々な用途が想定される技術の場合、権利範囲に主要な用途が含まれているのかどうかも確認するとよい。
ポイント3:商用化の観点からの知財の再取得をマイルストーンとして設定する
投資時点で知的財産権の権利範囲が狭く、競合の参入を防ぐことができる権利になっていないなど、権利の優位性がなければ、投資後に追加出願することをマイルストーンとして設定する。
大学発ベンチャー設立の前段階の研究プロジェクト段階から研究者に伴走して支援している。まず技術を持っている大学の研究者がいて、VCが事業化の観点から特許をどのように出願するかを検討し、その出願のために必要なデータを研究者に集めてもらう。その後、特許を出願し、事業計画の策定を行い、人材を採用する。
大学発ベンチャー企業への投資を行っているが、大学で登録した特許権は、ビジネスで使う場合に優位性がないこともある。そこで、調査を行った上で不足があった場合には、投資後のマイルストーンとして追加の特許権や商標権を取得してもらうことを設定し、ベンチャー企業に遵守してもらっている。この結果、次のラウンドの投資につながった実績がある。