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落とし穴事例

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落とし穴5:大学とのライセンス契約の条項に課題があり、起業後の企業価値の向上やEXITに問題が生じる

よくあるケース

VCは、大学が保有する特許を活用したベンチャー企業に対する投資を検討していました。大学の技術移転部門との知財交渉では「契約条項は大学のフォーマットに従ってもらいます」といわれ、ベンチャー企業は通常実施権の許諾を受け、VCは不安が残りましたが投資を行いました。

その後事業は進展し、EXITとして事業会社によるM&Aが視野に入りました。事業会社からの知財デューデリジェンスの段階で「M&Aには大学からの知財の譲渡が必須」と言われましたが、大学が交渉に応じてくれず、VCはEXIT戦略を練り直す必要が生じました。

この落とし穴の類似パターン

  • ライセンス契約の料率(イニシャルペイメント、ランニングロイヤルティ)を高率で締結してしまい、起業後・成長後のキャッシュフローを圧迫する。
  • 大学から複数の知財のライセンスが必要で、ロイヤルティのスタック(積み重なり)を起こしてしまい、事業が組めなかった。
  • ライセンス契約の契約条項(料率、期間等)が「別途協議」になっており、曖昧さが残されてしまい、その後の資金調達に支障がでる。
  • 事業会社へのM&A間際であったが、知財が大学からベンチャー企業に譲渡されていないため、事業会社がベンチャー企業を飛ばして大学から知財だけを直接購入し、M&Aが破談。
  • 公的な研究助成を活用して知財を創出したが、助成金のルールにより海外企業に対して知財を売却できない。

対策:大学とのライセンス契約に対して交渉・資金・資本政策面からの支援を行う

ポイント1:大学の契約はその後のバリュエーションとEXITに大きな影響

大学との契約の条件はその後のラウンドでのバリュエーションやEXITに致命的な影響を及ぼすこともある。特に、特許権の譲渡がかなわなかったり、ライセンス料率が高すぎる場合、M&Aが進まない場合がある。中長期的な成長に制約がないように早い段階で手を打つことが重要である。

ポイント2:知財契約の交渉事項の考え方について合意しておく

起業の際に大学との知財契約の内容をすべて決めることが難しいケースも存在する。その際には、料率の決め方、計算式などの考え方を合意しておくことで、事業化後の交渉を円滑にすることができる。

ポイント3:大学との知財契約に要する費用を投資金額に含めておく

大学は、ライセンス等知財による収益を確保するために、相応の対価を期待している。投資家は大学に支払う費用を見積もり、投資金額、バリュエーションに反映させておくことが必要である。

ポイント4:大学への対価支払いとしてストックオプションを活用する

ライセンスの対価として大学にストックオプションを付与することは、日本においても実施することが可能である。大学が提示するライセンス料率の条件が高すぎる場合は、代わりにストックオプションを付与する等の交渉も一案だ。また、ストックオプションの発行は今後の資金需要を踏まえて、資本政策全体の観点で検討することが求められる。

参考事例
大学との知財ライセンス契約の費用を投資金額に織り込む

ある日本の大学VCは、バイオ分野の研究者とともに合成生物学の分野のベンチャー企業を資本金数百万円で立ち上げた。VCはベンチャー企業とともに詳細な領域ごとのビジネスモデルと知財戦略を立案し、この点が評価されて米国のVCから数億円もの巨額の投資を受けることに成功した。この投資金額には、米国のトップ弁護士を活用した知財の獲得、米国の大学からの知財ライセンス契約の費用があらかじめ含まれたものであった。

(国内ベンチャーキャピタル)

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