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落とし穴事例

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落とし穴8:基本特許は確保したが、他社に周辺知財を押さえられてしまい、事業がスケールしない

よくあるケース

VCは革新的な素材を開発した研究者による大学発ベンチャー企業への投資を考えていました。

その研究者の話では「大学で研究成果の基本特許を登録しているから大丈夫。企業との共同研究も順調に進んでいる。」とのことで、VCはこの言葉を信じ、シードラウンドの投資を実行しました。

しかし後日、研究者から「共同研究先の企業が素材の用途に関する特許を単独で出願したらしい」という連絡がありました。大きな市場規模が想定されますが、この企業にロックインされるのでしょうか。

この落とし穴の類似パターン

  • 周辺特許を事業会社に取ってもらって連携を行っていたが、その事業会社と関係が悪化してしまい、事業展開できなくなる。
  • 他社から技術者が出向してくることで情報が漏洩し、周辺特許として取られてしまう。
  • 事業会社にプレゼンテーションをしたら、アイディアを特許出願されてしまった。

対策:事業成長に必要な知財ポートフォリオを構築しよう

ポイント1:ポートフォリオが必要であることを理解する

事業を拡大させていくためには、一つの知財(特許権やブラックボックス技術)では十分ではないケースがほとんどである。周辺知財とは例えば、素材等の場合、製造方法、用途、量産技術に関するものが考えられる。また、IT系の技術であれば、同じ効果が得られる代替手段を洗い出し、たとえ自社が採用しないものであっても権利化しておくと、他者の参入を防ぐことができる。後発企業の立場になって、ポートフォリオ化を考えることが重要である。

ポイント2:基本知財だけでなく、周辺知財も評価し、必要に応じて発明者の採用を支援

周辺知財はコアとなる技術とは異なる技術が必要になることもある。その際、コア技術の分野の発明者だけでなく、必要に応じて周辺技術の発明スキルを有する技術者を採用する。ものづくりやバイオ分野において、量産技術の開発が必要になった場合などが典型例である。

ポイント3:事業提携の場合は情報管理、共同出願に留意する

事業会社等と提携する場合には、情報管理に注意を払う必要がある。プレゼンテーション等で話したことを先に権利化されたり、共同研究先が周辺知財を勝手に押さえてしまう等の事態を防ぐには、機密情報を不用意に話さないことや、事前に自社で出願しておくこと、秘密保持契約や共同研究契約等の契約内容を精査することが需要である。契約書の内容などは、必ず弁護士などの専門家に確認してもらうことが望ましい。

<参考>知財を使った企業連携4つのポイント https://ipbase.go.jp/support/
参考事例
外部企業からの周辺知財の調達をVCがハンズオンで支援する

ある米国のVCでは、研究機関からスピンアウトしたベンチャー企業に対して投資を行った。コア技術に関しては元の研究機関から知財の譲渡を受けているものの、事業のユースケースを想定した場合に不足する周辺知財が存在することが明らかになった。調査を行ったところ、海外の企業が周辺の知財を有していることが分かったため、VCとベンチャーが一緒になって海外の企業と交渉した結果、周辺知財のライセンスを受けることができた。

(米国ベンチャーキャピタル)

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