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落とし穴10:海外展開を目指しているが、知財・標準化戦略が国内市場向けに留まっている
よくあるケース
VCの投資先である大学発ベンチャー企業は、国内市場で一定の成果を出したため、米国や欧州への事業展開を行おうとしていました。「この事業は日本で成功したから、米国でもきっといけるだろう」と、チームの全員が確信していました。また、海外での事業展開に備えて基本特許を海外でも出願していました。
進出先国に現地の拠点を設けて、責任者と研究者を日本の本社から派遣し、現地向けの製品の開発を進めました。1年後、製品の発売に至りましたが、一向に顧客が増えません。それどころか、海外の企業から知的財産を侵害しているという警告がありました。
この落とし穴の類似パターン
- VCが現地の経営陣や技術者の採用を支援した。しかし、採用して間もなく競合他社に転職してしまい、機密データを含む営業秘密が漏洩してしまった。
- 基本特許を日本にしか出願しておらず、海外展開を断念せざるを得なかった。
対策:進出先国に合わせた知財戦略と採用戦略を推進する
ポイント1:進出先国向けの知財戦略の立案を支援する
海外では国内とは異なる知財戦略が求められる。海外の知的財産の調査を行い、現地向けの製品開発に伴う追加の基本特許、商標等の知的財産ポートフォリオの構築、営業秘密の漏洩防止等について議論し、海外の事情に通じた専門家に相談することが重要である。各国によって法律や基準が異なるため、必ずしも日本と同じ範囲の権利が取れるとは限らないことに注意する必要がある。
ポイント2:現地の経営者や技術者の採用を支援する
研究開発型ベンチャー企業では、技術者が大学の研究室の研究者等の日本人ばかりで構成されていることがあるかもしれない。海外展開を見据える場合には、進出先国の外国人の経営者や技術者の採用を支援し、現地向けの製品開発やこれに伴う権利化や調査などの知的財産実務に対応していくことが望ましい。
あるベンチャーキャピタルでは、ビッグデータを取り扱うBtoB向けソフトウェアを展開しているベンチャー企業に投資をしていた。コア技術はアルゴリズムであるため特許ではなくノウハウで秘匿されている。投資後、この投資先が米国進出を行うことになった。日本と違って米国のユーザーはシンプルなユーザーインターフェイス(UI)を好むことから、米国のデザイン会社とともにUIをこだわって徹底的に作り直した。このような国によるユーザーの価値観の違いは重要であった。
さらに、ベンチャー企業の会社名が米国の発音では呼びにくいことも懸念された。このため、複数の国の言葉でも通用する会社名を検討するとともに、先行する商標がないかどうかの調査を行った。米国が主な市場であるため、英語で良いイメージになるような企業名にリブランドを行うことができた。