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AI編

AI編
ビジネスモデル特許でのAI関連特許取得

業種や業務、技術カテゴリーなど分野別の知財戦略を専門家にヒアリング。
当該ジャンルの起業・スタートアップに必須の基礎的な知識をお届けします。

テーマ:AI

 さて、先程はビジネスで利用しやすい特許権を取得したいというお話をしました。ここで、近年注目されているビジネスモデル特許をご紹介します。

 例えば、機械学習を用いて自動で会計項目ごとに分類を行う会計ソフトがあったとします。この場合、高い精度で分類を行うために学習方法に着目した内容で特許出願を行うことも考えられます。しかし、ここで一つ考えたい観点は、「自分たちのシステム(サービス)は、機械学習(AI)を利用しなければ本当に実現しないのか?」という点です。

 もし、今後の開発で機械学習以外の方法で精度の高い分類を行うことができる場合や、そもそも分類にそこまで高い精度は必要なく自社のシステムの強みはそれ以外のポイント(UIやその他の機能等)に強みがある等の場合であれば、必ずしも機械学習の詳細を特許のポイントにする必要はなく、区別の観点に着目して出願を行うほうが本来の目的に沿った特許出願を行うことができます。このような考え方を反映するのがビジネスモデル特許としての特許出願の基本的な考え方になります。

 つまり、機械学習の詳細に着目した学習方法の特許にはどうしても、①侵害の証拠を把握しにくい、②短期間の間に変化して特許の内容と実際のシステムがずれやすい、といった弱点があったのですが、ビジネスモデル特許にはこのような問題が比較的生じにくいという強みがあります。

 ここで一つ、ビジネスモデル特許を意識して取得されている特許権の例を見てみましょう。次の例は、住宅への不審者侵入の危険度を判別するシステムに関する特許です。明細書の記載や実際のシステムでは、ニューラルネット等が利用されていることは容易に想定できますが、実際の権利(特許請求の範囲)の記載を見ても、機械学習(特に細かい学習の内容)についての限定はなく、参照用画像情報、参照用住宅構造情報などの情報に基づいて、不審者侵入への危険度を判別するシステムとしてのみ規定されています。このような特許はまさに先程のような観点を強く意識したビジネスモデル特許といえるでしょう。

【発明の名称】 危険度判別プログラム及びシステム
【出願日】 令和1年10月30日(2019.10.30)
【特許権者】 ASSEST株式会社
【FI】 G08B 31/00、G08B 25/00他
【状況】 特許権存続中

【要約】
【課題】危険度を事前に察知し、事件を未然に防止する。
【解決手段】住宅への不審者侵入の危険度を判別するための危険度判別プログラムにおいて、住宅の外部を撮影した参照用画像情報と、住宅のロケーションを特定するための参照用ロケーション情報とを有する組み合わせと、当該組み合わせに対する危険度との3段階以上の連関度を予め取得する連関度取得ステップと、新たに危険度を判別する際に、新たに住宅の外部を撮影することにより画像情報を取得するとともに、その住宅のロケーションを示すロケーション情報を取得する情報取得ステップと、上記連関度取得ステップにおいて取得した連関度を参照し、上記情報取得ステップを介して取得した画像情報とロケーション情報とに基づき、上記住宅への不審者侵入の危険度を判別する判別ステップとをコンピュータに実行させる。
【請求項1】住宅への不審者侵入の危険度を判別するための危険度判別プログラムにおいて、住宅の外部を撮影した参照用画像情報と、住宅のロケーションを特定するための参照用ロケーション情報とを有する組み合わせと、当該組み合わせに対する危険度との3段階以上の連関度を予め取得する連関度取得ステップと、新たに危険度を判別する際に、新たに住宅の外部を撮影することにより画像情報を取得するとともに、その住宅のロケーションを示すロケーション情報を取得する情報取得ステップと、上記連関度取得ステップにおいて取得した連関度を参照し、上記情報取得ステップを介して取得した画像情報とロケーション情報とに基づき、上記住宅への不審者侵入の危険度を判別する判別ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする危険度判別プログラム。


 ただし、一点注意しなければいけないのが、ビジネスモデル特許は、国により権利取得の基準が大きく異なる点です。上の例もすでに日本では特許権を取得していますが、国によっては、同じ内容で特許権を取得することは難しいかもしれません。そのため、グローバルにサービス展開を想定している場合には、国ごとに異なる知財戦略を検討する必要があります。

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