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SaaS連載

テーマ:SaaS 第3回
講師:大野総合法律事務所 弁理士 酒谷誠一氏
サーバー側の処理は権利化しなくても大丈夫?

講師:大野総合法律事務所 弁理士 酒谷誠一氏

サーバー側の処理は侵害されても侵害を立証しにくいから権利化は不要かというと、そうとは限りません。

ライバル企業が乱立する領域では、競争優位性を得るために特許出願に動く他社が出てきます。すると、自社が従来から使っている処理であっても、他社から権利侵害で訴えられる恐れがあるのです。他社から権利侵害で訴えられるのを未然に防止する観点から、特許を取得しておくということも検討しましょう。

もちろん「先使用権」といって、他社の出願よりも前に自社が実施していれば特許の技術的範囲であっても実施を継続できますが、先使用権を主張するための証拠を事前に準備しておかなくてはなりません。特許を出願せずに秘匿する戦略をとるのであれば、先使用権を主張しやすいように、サーバー内プログラムのログを残しておくことが大切です。

なお、特許法の改正により新たに「査証制度」が導入され、2020年秋から施行される見込みです。これまではサーバー側の処理内容は外部からは見えないため、侵害に当たるかどうかの判断が難しいという問題がありました。査証制度の導入後は、訴訟が提起されて訴訟内で査証が認められると、第三者の専門家が相手側のオフィスや工場等に赴き、ソースファイルの確認やプログラムを動かして侵害に当たるかどうかを査察可能になります。

つまり、これからはサーバー側の処理についても権利侵害を立証できる可能性があります。競合に特許権を取られたくなければ、技術ノウハウの漏洩にならない範囲で特許権利化して、先に特許権を押さえておくという手もあります。技術ノウハウにあたるような細かい処理内容までは特許出願書類には書かなくてもいいので、営業上開示する程度の処理の概略については、特許取得しておいてもよいと考えられます。

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