文字の大きさ

English
  • IP BASE

イベント告知・レポート

【IPAS2020】知財アクセラレーションプログラムのキックオフイベントを開催しました!

特許庁は、2020年7月27日、「知財アクセラレーションプログラムIPAS2020」の支援先企業を紹介するキックオフイベントをオンラインで開催した。特許庁では、スタートアップの成長を知財で加速させる知財アクセラレーションプログラム(IPAS)を2018年より実施している。今年度のIPAS2020は、支援期間を昨年度の3か月から5か月に拡大、充実した支援が受けられる。今年度は113社の応募企業から15社が採択された。ここでは、本イベントで実施された支援先企業によるピッチをレポートする。

・株式会社スペースシフト(東京都千代田区 代表:金本 成生)


トップバッターは、宇宙×AIで世界を紐解く株式会社スペースシフト。
地球観測衛星から得られる膨大なデータを人工知能を用いて自動解析し、様々な地球上の変化を読み解くソフトウェアを開発する。人工衛星は自社で持たず、衛星から得られる大量のデータの解析に特化している。特にレーダー衛星に着目し、小さな見えづらい変化を解析により取得できることが特徴だ。衛星内のAIで解析することでダウンロードの負荷を小さくする技術開発もしているとのこと。
今後の自動車の流通予測や、第一次産業の総生産量予測等のサプライチェーンの見える化には不可欠な技術になるとのことだ

・株式会社Jij(東京都文京区 代表:山城 悠)


2社目は、量子・イジング計算機を用いた最適化アルゴリズム・ソフトウェアの開発を行う株式会社Jij。当日は代表の山城氏がオンラインで登壇した。
Jijは、これまで計算困難であった課題の解決を目的としている。具体的には、シェアリングエコノミー、ビッグデータ、MaaSの組み合わせ最適化問題など。これらには数学的な問題が隠れており、量子計算技術によりそれらの問題を解いていくという。もともとは科学技術振興機構(JST)の研究をもとに量子計算技術をコアとして立ち上がったベンチャー企業。日立、マイクロソフトとも連携して、量子アニーリングを自動化し統一されたインターフェイスで計算処理を実行できる独自のJijクラウドというソフトウェアを構築した。
IPASでは、技術的な参入障壁と知財戦略でより強固な知財基盤を固めたいという。量子計算機という業界自体を盛り上げていきたいとのことだ。

・株式会社コーピー(東京都文京区 代表:山元 浩平)


3社目は、XAI&QAAIでミッションクリティカルなAIを実現する株式会社コーピー。
現在導入されているAIシステムは一部の領域に限られており、多くはPoCより先に進んでいないという。その背景には、AIがブラックボックス化されていることによりその出力結果の判断根拠が理解できないこと、品質の検証が十分にできていないこと、導入・運用管理のプロセスが分からないことなどがある。そこでコーピーは、様々なアプローチでAIの判断根拠を説明可能にするXAIと、AIのための品質保証技術QAAIを開発している。
IPASでは、XAIとQAAIの知財戦略立案と、それを活かした大企業との協業にむけたサポートを期待する。

・アナウト株式会社(神奈川県横浜市 代表:小林 直)


4社目は、ディープラーニング技術を用いて外科医療の未来に貢献する「人体の地図」を作るアナウト株式会社。
手術ロボットのダビンチを筆頭に技術革新により手術を巡る環境は大きく変化している。しかし、それにもかかわらず手術合併症は増加傾向にあり、その2~3割は医師の誤認識が原因と言われている。そこでアナウトは、人工知能技術を活用し、切るべきところと、守るべきところを患者個人レベルで最適化、明確化した人体の地図を作成、提供することで、手術合併症の減少を目指す。

・株式会社HERBIO(東京都渋谷区 代表:田中 彩諭理)


5社目は、おへその周辺温度計測ウェアラブルセンサー開発中の株式会社HERBIO。
人の体温には深部体温と皮膚温度があり、体の異常を反映する深部体温の計測はこれまでの機器では難しかった。おへその温度(臍部温度)は直腸温度(深部体温)に近い推移を示すこと、おへそは汗腺がなく安定的に計測できることから、おへそでの体温計測に着目してウェアラブル体温計を開発。さらに記録したおへその温度発熱パターンと体調記録アプリとの併用による診断補助システムを開発している。
手軽で使いやすい医療機器とアプリで、民間と医療をつなぎたい、とのことだ。

・アンヴァール株式会社(静岡県浜松市 代表:櫻井 重利)


6社目は、海水からの有用物質採取や二酸化炭素の資源化・固定化を目指す、アンヴァール株式会社。
マグネシウムはアルミより軽く、また海中の埋蔵量も非常に多い(1,800兆トン)ことから、マグネシウムの利用に着目。海水からマグネシウムを回収する技術を開発した。また、CO₂の固定化にも着目し、マグネシウムとCO₂を燃やして発電する技術の着想に至った。
IPASでは、これらの技術に関する特許をより強固な権利とするためのサポートを期待する。

・inaho株式会社(神奈川県鎌倉市 代表:菱木 豊)


7社目は、inaho株式会社。人手不足と農業経営の課題解決を目指して、収穫など人の判断が必要な農作業を"AI"と"ロボティクス"でサポートするRaaSモデルによる自動野菜収穫ロボットを開発している。
現在アスパラガスの自動収穫ロボットを開発しており、暑いハウスの中での作業をロボットで昼夜関係なく実施できる。ロボットの導入により、これまで収穫に割いていた人的リソースを、生産性をあげる、よりおいしくするなどの業務にあてることができる。アスパラガス以外のきゅうり、トマトについても取り組んでいるところ。ロボットを販売するのではなく、収穫高に応じて料金をもらうRaas型のビジネスモデルだという。

・Cellid 株式会社(東京都港区 代表:白神 賢)


8社目は、Cellid株式会社。世界最大級となる60°の視野角を誇るARグラス向けシースルーディスプレイおよび空間認識エンジンの提供・開発を行っている。
ARグラスはスマートフォンの次に来る大きな波になるとみて、3年前よりARグラス用ディスプレイシステム及び空間認識システムの開発に取り組んでいる。現在開発中のディスプレイシステムは、世界最大の視野角(60°)、かつ価格は他社製品の約1/4になる見込みとのこと。また、空間認識システムは、デバイスの位置をリアルタイム・ミリメートル単位で3次元認識するミドルウェアとなり、OSSより1.8倍の認識精度を実現したという。

・株式会社GCEインスティチュート(東京都中央区 代表:後藤 博史)


9社目は、株式会社GCEインスティチュート。「アンビエント発電」により空気からエネルギーを取り出して電気に変える半永久電源の実現に挑戦する。 世界では未利用熱や環境熱が年間約150兆円分発生しており、これを再生可能エネルギーに活用すべく、「空気の温度」も半永久的に電力へ変換できる究極の環境発電技術「アンビエント発電」の実用化に挑戦する。5G、AI時代の本格到来でIoTセンサーの市場拡大が予想されることもあり、このIoTセンサーに使用されるボタン電池の代わりとなる交換不要な電源を開発する。

・株式会社チトセロボティクス(東京都台東区 代表:西田 亮介)


10社目は、時給980円のロボット労働力の提供およびロボットシステムの開発を行う株式会社チトセロボティクス。
一般にロボットは高価であり、またロボットが実行する作業に応じたプログラミングの納期に非常に時間がかかっている。実はロボット導入費のほとんどがプログラミングの人件費にかかっているという。そこで、人間の神経系をアルゴリズム化してロボットに組み込むことで、ロボット自身が周りの状況を判断して動けるようにした。これによりロボット立ち上げまでの期間が飛躍的に短縮化され、時給980円というサブスクリプション型のサービスが実現できたとのこと。

・ライトタッチテクノロジー株式会社(大阪府大阪市 代表:山川 考一)


11社目は、中赤外レーザー光を応用した採血のいらない非侵襲血糖値センサーを開発する、ライトタッチテクノロジー株式会社。
2045年10人に1人が糖尿病になると言われており、高血糖状態が続くと合併症を引き起こすリスクが高まる。また、糖尿病患者は血糖値の自己管理が重要になるが、肉体的、精神的、経済的な負担が問題となる。そこで、採血不要、廃棄物ゼロ、指先を光にかざすだけで血糖値を計測できるセンサーを開発しているとのこと。
IPASでは、事業と知財の両面から支援を受けることで、事業戦略と知財戦略を一体化させたい、とのこと。

・株式会社Genics(東京都新宿区 代表:栄田 源)


12社目は、口腔からヘルスケアのサポートを目指す次世代型全自動歯ブラシの開発を行う株式会社Genics。
歯周病は様々な病気の発症リスクを高めることが知られている。また、介護現場では高齢者の死因上位に入る “誤嚥性肺炎”の予防にも口腔ケアが欠かせない。しかしながら、介護士側のスキル不足/個人差や人手不足により口腔ケアは不十分なのが現状だという。そこで、全自動でブラシが動き、誰でも30秒咥えるだけで歯磨き可能な次世代全自動歯ブラシを開発している。

・ジェリクル株式会社(東京都文京区 代表:増井 公祐)


13社目は、新規開発のゲルを用いて体内の細胞を活性化することにより組織の再生を促す、新しい再生医療技術(内因性組織再生)の開発を行うジェリクル株式会社。
現状の再生医療は、患者自身の細胞等を培養等加工したものを用いて、失われた組織や臓器を再生する医療だが、非常に高額であり、かつ培養に長い時間を要する。そこで、足場材料を用いて、患者の持つ「内因性細胞」を最大限活用することにより、失われた組織や臓器を再生する内因性組織再生という再生医療技術の開発を行っている。これにより、再生したい箇所に再生したい臓器を直接再生可能になる。
既に出願している基本特許をベースに特許網を構築しているところであり、IPASではより強固なものとなるようアドバイスを期待する。

・STAND Therapeutics株式会社(東京都港区 代表:樺山 博之)


14社目は、細胞内の疾患治療標的タンパク質にアプローチできる、細胞内抗体“STAND Technology”を用いた疾患治療薬の開発を行うSTAND Therapeutics株式会社。
アルツハイマー病は中枢疾患の代表例であり、神経細胞の中でタウの蓄積が発生する。したがって細胞内のタウにアプローチできる治療薬の開発が必要という。しかし、細胞内では従来の抗体医薬は凝集してしまい、安定して発現しなかった。そこで、凝集せず抗体として機能する細胞内抗体“STAND Technology”を開発している。
IPASでは、知財戦略立案から、共同研究契約の締結等のほか、資金調達に関するアドバイスも期待する。

・レグセル株式会社(京都府京都市 代表:半田 恭彦)


15社目は、体外で増やした抗原特異的なTreg細胞による細胞治療の開発を行うレグセル株式会社。
自己免疫疾患とは、免疫系が過剰に反応して正常な組織まで攻撃することで起きる疾患を指す。これに対して、Treg細胞と呼ばれる自己抗原のみに反応する細胞(制御性T細胞)を利用した治療法の開発を目指す。患者から採取した活性化T細胞を、抗原特異性はそのままに制御性T細胞に変換する手法を開発した。これを自家細胞による細胞治療として提供することで、原因不明の自己免疫疾患であっても免疫全般を抑制することなく治癒する。

本IPASプログラムでは、ビジネスの専門家と知財専門家のチームを各企業に5ヵ月間派遣してメンタリングを実施し、それぞれのビジネスに合った知財戦略を構築していく予定だ。

知財アクセラレーションプログラム「IPAS」についてはこちら

UP