文字の大きさ

English
  • IP BASE

イベントレポート

「北九州市SDGsスタートアップエコシステムプロジェクト 合同ミートアップ」に参加しました!

 特許庁スタートアップ支援班は2023年1月13日、北九州市主催のイベント「北九州市SDGsスタートアップエコシステムプロジェクト 合同ミートアップ」に参加した。北九州市では、環境・ロボット・DX分野に関連するスタートアップを中心に5つの支援プログラムを実施、各事業間での情報共有を目的に5事業の採択者と関係者が月に1回集まるミートアップイベントを合同で開催している。イベントでは、特許庁によるスタートアップ支援事業の紹介、北九州市スタートアップ推進課によるスタートアップ施策についての講演のあと、スタートアップ6社によるピッチが実施された。

image1.jpg

環境・ロボット・DX分野を中心にテック系エコシステム拠点都市の形成を目指す、北九州市の取り組み

 産業経済局 地域経済振興部 スタートアップ推進課 拠点化担当係長の谷本真一氏が登壇し、北九州市のスタートアップ支援について紹介した。北九州市では、株式会社安川電機をはじめとした民間企業や、九州工業大学など理工系大学が集積する学術研究都市と連携してスタートアップを支援し、ビジネスによるSDGs未来都市の実現を目指している。

 主な取り組みとして、ハードウェアのアイデアを募集し試作品開発までを支援する「Maker’s Project」、アイデア段階の企業の成長を支援する「COMPASS小倉アクセラレーションプログラム」、事業拡大へ向けた伴走支援「グローバルアクセラレーションプログラム(GAP-K)」、実証実験と事業化を支援する「スタートアップSDGsイノベーショントライアル事業(SIT-K実証支援・SIT-K事業化支援)」、プロフェッショナル人材の採用支援事業「スタートアップ・トライアル採用支援事業」、ジェトロ北九州との連携によるグローバル展開支援などを実施。

 また本年度は5つのスタートアップ支援事業を連携し、採択企業23社、認定VCなどの関係者が集まり、ピッチや交流会を定期開催している。デモデイも3月29日、30日の2日間、合同にて大々的に実施予定だ。

image4.jpg

産業経済局 地域経済振興部 スタートアップ推進課 拠点化担当係長 谷本 真一氏

2023年度はVCへの知財専門家派遣事業を本格実施 特許庁のスタートアップ知財コミュニティ支援

 特許庁総務部 企画調査課 スタートアップ支援班の佐野遥平氏が登壇。「知的財産権の概要・スタートアップ支援施策」と題し、知的財産権の基礎知識、スタートアップコミュニティの知財に関する課題と特許庁の知財支援の内容を説明した。

image5.jpg

総務部 企画調査課 スタートアップ支援班 佐野 遥平氏

 知的財産とは、財産的価値を持つ情報のことで、特許庁が所管する権利は「特許権」や「実用新案権」、「意匠権」、「商標権」の4つ。これらの権利を取得するには特許庁へ出願し、登録される必要があり、「特許権」は発明を20年間、「意匠権」はデザインを25年間、「商標権」は10年ごとの更新でブランド等を永年独占できる。

 知的財産権を取得するメリットには、事業差別化・模倣防止などの「独占」、オープンイノベーションなどの「連携」、資金調達時やM&Aでの評価向上など「信用」の3つが挙げられる。資金やリソースのないスタートアップの企業価値は知財に集約されるが、国内スタートアップコミュニティの知財意識は低い。しかし、海外VCからの出資や大手企業とのM&A等においては知財が重視されるため、知財戦略が不十分だと資金調達やイグジットの機会を逸失する可能性もある。

 特許庁では、事業戦略に連動した知財戦略策定の支援として、知財アクセラレーションプログラム(IPAS)を実施している。IPASでは、ビジネスの専門家と知財専門家からなる知財メンタリングチームをスタートアップに派遣し、ビジネスモデルの構築と事業戦略に連動した知財戦略の構築を支援する。

 またスタートアップの知財コミュニティの活動を促進するため、「IP BASE」を運営。スタートアップ知財ポータルサイト「IP BASE」を中心とした知財情報の発信、全国でのセミナーやイベント・勉強会の開催など、スタートアップ、弁護士・弁理士などの知財専門家、VCなどのスタートアップ支援関係者のネットワーク構築の場を提供している。

 さらに、2022年度に試験実施した「ベンチャーキャピタルへの知財専門家派遣事業」は2023年度から本格実施に移行され、派遣先VCの公募を行う予定だ。

 そのほか特許庁では、スタートアップ向けのスーパー早期審査、特許出願の手数料が3分の1になる減免制度なども実施している。

 後半はスタートアップ6社によるピッチを実施。

オリジナルウェディングを自分でつくれる「ブラプラ」

 株式会社ParaLux 代表取締役・CTOの村田里史氏は、ウェディングをつくるサービス「ブラプラ」を紹介。昨今はコロナの影響でフォトウェディングやウェブ招待状、少人数婚といった結婚式が一般化している。また趣味のスポーツやキャンプなどを取り入れたオリジナルウェディングもトレンドであり、従来の結婚式場では対応しきれなくなってきているという。「ブラプラ」は、プランナー、カメラマン、会場、ドレスなどをアプリで選択して、独自の結婚式を準備できるサービスだ。何を選べばいいのかわからない人向けに、プランナーだけ指名してすべてお任せするプランやAI診断で自動生成する機能もある。費用も従来の式場挙式よりも約35%抑えられ、予算に合わせて自由に内容を調整できるのもメリットだ。

image9.jpg

株式会社ParaLux 代表取締役・CTO 村田里史氏

AIカメラを使うための画像データセットを高速・精密に生成する「Dataset Generator」

 株式会社Techno.send(テクノセンド)は、九州工業大学発AIスタートアップ。北九州SDGsイノベーション&アントレプレナーシッププラットフォーム(通称KIEPS)のプロジェクトを通じてAIカメラの教師データを短期間で大量に作成するソリューション「Dataset Generator」を開発。Dataset Generatorを使用すると、人手による教師データの作成に比べて、GPUなしで約540倍、GPUありで約1000倍の速度で処理し、従来2ヵ月かかっていた教師データの作成が1時間で完了するという。AIカメラ開発におけるAIエンジニアの確保やデータ収集などのコストを大幅に削減でき、AIカメラの活用が広がりそうだ。

image3.jpg

株式会社Techno.send 代表取締役社長 鈴木章央氏

視覚障がい者がひとりで自由に出かけられる歩行アシスト機器「seeker」

 株式会社マリスcreative designは、視覚障がい者向け歩行アシスト機器「seeker」を開発。公共交通には視覚障がい者を誘導するための点字ブロックが設置されているが、実際に点字が読める人は約1割程度だそう。また、横断歩道の音響信号機は設置が少なく、夜間は音が制限されており、多くの視覚障がい者にとって移動は困難なのが現状だ。「seeker」は、メガネ型のセンサーが障害物などを検知し、杖に付けた装置の振動で知らせる仕組み。またAI検知用にエッジAIを開発し、ネット環境のない場所でもスタンドアロンで利用できる。視覚障がい者は、日常生活具給付制度を利用すると、0~2万円の自己負担で購入可能だ。2023年春からAI検知の実証実験を開始し、2024年の量産化を目指す。

image6.jpg

株式会社マリス creative design 代表取締役 和田康宏氏

保育園DXで培った業務効率化や安全管理ソリューションを他業種に展開

 株式会社ハピクロは、自社運営の認可保育園用に保育帳票作成や午睡見守りシステム、AIカメラを活用した安全管理ソリューションなどを開発し、保育DXを実践。そこで培った技術を応用し、製造業や食品製造業・飲食業向けのソリューションを展開している。食品製造業・飲食業は慢性的な人手不足のなか、2021年6月からはすべての製造工程を記録するHACCP(ハサップ)による衛生管理が完全義務化され、業務負担が増している。衛生管理の効率化ソリューション「FOOD CAPTAIN - FHMS」は、温湿度や入退室の自動記録機能やHACCPやISO22000等に対応した衛生管理の記録機能を搭載。衛生管理機能に加えて、GMP等の製造管理機能を搭載する「FOOD CAPTAIN - FMMS」もキューサイ株式会社と共同開発中だ。

image2.jpg

株式会社ハピクロ 代表取締役社長 中田佳孝氏

手指のように柔らかいロボットハンドの導入で働きやすい現場を実現

 KiQ Robotics株式会社は、人の指のような柔らかい指先(柔軟指)をコア技術に、産業用のロボットハンドを開発している。指先の素材は3Dプリンターで使われるごく一般的な硬質の樹脂製だが、独自の3次元格子構造により柔軟性を実現し、従来のロボットハンドでは難しかったボールや重量物なども把持できる。この特徴を活かし、実験室の試験管を扱うラボオートメーション、工場内のケースを運ぶハンドリングに導入されている。最近では、廃棄物処理現場の自動化に注力し、梱包バンドの回収やペットボトルの仕分けといった選別作業のロボット導入に取り組んでいるそうだ。

image8.jpg

KiQ Robotics株式会社 代表取締役 CEO 滝本隆氏

オンラインイベントのクオリティを上げるロボット司会サービス「tender」

 イベントの最後に株式会社HANATABAの代表取締役 柴田啓祐氏が飛び込みでピッチに参加し、オンラインイベントのロボット司会者サービス「tender(テンダー)」を紹介。大小様々なイベント(交流会・会議・1on1)のオンライン化が進んでいるが、オフラインに比べて満足度の低さが課題だ。クオリティの高いイベント進行には事前の設計とファシリテーターが必要だが、小さなイベントには予算やスタッフの確保が難しい。「tender」は、Zoomの画面共有で司会をするロボットで、台本をもとに参加者への指示出しや進行を自動化するサービス。現在は学習塾の自習室運営に導入されており、人件費の削減やスムーズに進行できたなどの効果が得られているとのこと。台本はノーコードで作成でき、今後はさまざまな業界向けの台本を作成し、マーケットプレイスで販売していく計画だ。

image7.jpg

株式会社HANATABA 代表取締役 柴田啓祐氏

UP