イベント告知・レポート
SusHi Tech Tokyo 2026で聞いたスタートアップの知財活用。特許庁IP BASEが支援取り組みを周知
特許庁が運営するスタートアップ向け知財支援コミュニティ「IP BASE」は、2026年4月27日から29日にかけて開催された「SusHi Tech Tokyo 2026」に日本弁理士会と共同でブース出展を行った。ブースでは、知財を活用して事業展開を進めるスタートアップが日替わりで参加し、各社の技術や取り組みを紹介した。
IP BASE、VC-IPAS、OIモデル契約書の取り組みを紹介
特許庁総務部企画調査課スタートアップ支援班の神成勇輝氏と峯あみい氏
今回の出展では、特許庁が運営するスタートアップ向け知財支援コミュニティ「IP BASE」の取り組みに加え、ベンチャーキャピタル(VC)への知財専門家派遣プログラム(VC-IPAS)および「オープンイノベーションを促進するためのモデル契約書(OIモデル契約書)」の周知を行った。
VC-IPASは、スタートアップを対象とした知財アクセラレーションプログラム(IPAS)(2024年度よりINPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)に移管)に加え、特許庁が実施する伴走型支援プログラムである。スタートアップへの投資や成長支援を行うVCに知財専門家を派遣する仕組みとして展開している。これにより、VCを通じて効率的にスタートアップを支援できるだけでなく、VCによる投資判断や投資先支援における知財活用の促進を目指している。
また、OIモデル契約書は、スタートアップと大企業などが連携する際に活用できる契約の参考資料として、特許庁が作成・公開しているものだ。必ずしも契約実務に習熟していないスタートアップなどが不利な条件で契約を締結するリスクを軽減することを目的としており、契約条文のひな形に加えて、各条項に関する解説も詳しく掲載している。
現在は「新素材編」「AI編」「大学・大学発ベンチャー編」「大学・事業会社編」が公開されており、特許庁のオープンイノベーションポータルサイトから無料でダウンロードできる。
ブースでは、過去にIPASの支援を受けた、株式会社エアロネクスト、株式会社Genics、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社、株式会社スパインクロニクルジャパン、株式会社Closer、アスエネ株式会社の6社が日替わりで参加し、各社の技術や事業内容を紹介した。取材した4月27日には、エアロネクストとGenicsが参加しており、それぞれの取り組みについて話を聞いた。
独自の機体安定化技術「4D GRAVITY」をライセンス提供
株式会社エアロネクスト 広報部 部長 伊東奈津子氏
エアロネクストは、産業用ドローン向けの技術開発をするスタートアップ。
コア技術は、機体の形状・構造などに基づく揚力・抗力・機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化し、ドローンの飛行において重要となる機体の安定性や効率性を向上させる独自の機体構造設計技術「4D GRAVITY」で、関連する特許を多数保有している。物流を中心に、空撮、警備、農業などさまざまな用途の産業用ドローンへの活用を想定しており、現在は国内メーカーへのライセンス提供や共同開発を進めている。
同社の特徴の一つが、自らがメーカーとなって機体の量産・販売をするのではなく、技術提供を中心としたライセンスビジネスをしている点だ。広報部部長の伊東奈津子氏は、「自社で機体を量産するのではなく、独自技術をライセンスによりメーカーに提供し、メーカーとともにライセンス製品を業界のデファクトスタンダードにすることを目指している」と説明する。
こうしたライセンスビジネスの発想には、代表取締役CEOの田路圭輔氏の過去の事業経験がある。田路氏は、テレビの電子番組表(EPG)の事業立ち上げに携わった経験を持ち、その際のライセンスモデルをドローン分野にも応用している。
また、市場の拡大を見据え、物流分野に特化した子会社も展開。ドローンを活用した物流サービスを実施することで、現場で得られた運用上の課題や知見を技術開発に反映しているという。こうしたサービスモデルについても知財化を進めている。
ロボット歯ブラシ「g.eN」の構造とアタッチメントの知財戦略
株式会社Genicsのブース
Genicsは、ロボット歯ブラシ「g.eN(ジェン)」を手掛けるスタートアップ。一般的な電動歯ブラシでは、歯に沿ってブラシを動かすのは利用者自身が行う必要があるが、同社はその動作を自動化し、人が手を動かさなくても歯に沿って磨ける仕組みを製品化している。
g.eNでは本体を口にくわえると、歯の形状に沿ってブラシを動作させる構造を採用。こうした「人が動かさなくても歯に沿って磨く」という仕組みについて特許を取得している。
ロボット歯ブラシ「g.eN」
大学発の技術として開発を進める中で、同社はIPASの支援も活用。上述の特許出願に加え、国際出願も進めているほか、口に触れるアタッチメント部分についても権利化を進めているという。
https://ipbase.go.jp/learn/ceo/page37.php
代表取締役の栄田源氏によると、こうしたアタッチメントの知財戦略には、将来的な互換品の参入を見据えた狙いがあるという。関連する構造や展開方法をあらかじめ検討することで、事業上の競争力強化につなげたい考えだ。
現在は量産化の段階にあり、先行して実施したクラウドファンディングでは1200人以上からの支援を受け、約3500万円を調達した。今後は製品の発送を進め、一般販売につなげていく予定だ。
文●松下典子 編集●ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

