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IPASを通して見えた知財メンタリングの基礎

2.知財メンタリングの基礎

1 研究開発型スタートアップ向け知財メンタリングとその魅力

「研究開発型スタートアップ向け知財メンタリング」とは、どのような業務なのでしょうか。
ここでは、多くの知財専門家が携わっている、「大企業向けアウトソーシング業務」との違いという観点でご紹介します。


研究開発型スタートアップへのサービスとは
「伴走型」、「提案型」のサービスが求められる傾向にあります

 研究開発型スタートアップは、大企業に比べて社員数や社員のスキルの幅で不足する部分が存在します。知財に関しては、知財部等はなく興味をもった個人または数人が他業務との兼務で担うといった傾向が見られます。
 そのため、専門家は、研究開発型スタートアップのやりたいことや技術を理解し、時には、知財の基礎的な知見を研究開発型スタートアップに示す等、研究開発型スタートアップに伴走しながら業務を進める必要が出てきます。
 さらに、研究開発型スタートアップ側が、必要な業務をすべて把握できていない場合もあるため、依頼内容に不足がある場合もあります。
そのため、知財専門家には、相談希望事項にない場合であっても、必要な対応を積極的に提案していくことが求められます。
知財メンタリングとは
研究開発型スタートアップの成長を「助ける」業務です

 「知財メンタリング」とは、知財の専門的知見を活かして、研究開発型スタートアップの成長を助ける業務です。
 そのため、例えば、研究開発型スタートアップが問題を抱えている場合、“先生”という立場でその問題に対する「答えを出して指導する」のではなく、研究開発型スタートアップが自らその問題を解決できるよう、「助言やヒントを与えたり、解決に必要な知見を与えたり」することが求められます。
 そのため、ともにビジネスの成功を目指す者として企業に寄り添い、経営にコミットする意識をもって、研究開発型スタートアップの成長を「助ける」姿勢が重要です。
研究開発型スタートアップ向け知財メンタリングの魅力
企業活動に近い立ち位置で、企業の成長に直結する仕事ができます

 上記にあるように、研究開発型スタートアップ向け知財メンタリングにおいては、「顧客企業のビジネスのロードマップを思い描き、顧客企業の経営にとって真に必要な知財の手当てを提案する」ことが求められます。
 そのため、提案する取組は研究開発型スタートアップの成長に直結する場合もあります。
 このように、企業活動に近い立ち位置で仕事ができることが、知財メンタリングの最大の魅力といえます。

2 知財メンタリングに使える基礎的知識

 研究開発型スタートアップを知財面から支援するにあたって、ビジネス専門家、知財専門家の立場を問わず必要とされる基礎的な知識が存在すると考えられます。 知財メンタリングは、大企業向けの業務よりも企業活動に近い立ち位置をとる傾向にあります。そのため、下記に示すようなビジネスのフレームワークや知財の仕組み等は、理解しておくと良いと考えられます。

知財メンタリングに使える基礎的知識(主なもの)
No. 分類 基礎的知識名 概要
1 ビジネス 3C分析 「Customer(市場・顧客)」、「Competitor(競合)」、 「Company(自社)」の3つの視点で行うビジネス環境の分析
2 ビジネス バリューチェーン 原材料や部品の調達から製造や販売まで一連の各工程を 価値(Value)の連鎖(Chain)として捉える考え方
3 ビジネス ビジネスモデル キャンバス 提供価値や顧客、販路、コスト、収益等の9つの項目から、ビジネスモデルを整理するために使うフレームワーク
4 知財 事業戦略と知的財産戦略の融合 研究開発型スタートアップが大企業と協業や競合する際に武器になるように事業戦略と融合した知財戦略を構築する考え方
5 知財 特許ポートフォリオ 保有特許を、技術分野、課題、解決手段、製品分野、出願・登録年別等で分類し、経営戦略や競争力評価に活用するフレームワーク
6 知財 IPランドスケープ 自社、競合他社、市場の研究開発、経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み、自社の市場ポジションについて現状の俯瞰・将来の展望等を示すもの
No. 分類 基礎的知識名
概要
1 ビジネス 3C分析
「Customer(市場・顧客)」、「Competitor(競合)」、 「Company(自社)」の3つの視点で行うビジネス環境の分析
2 ビジネス バリューチェーン
原材料や部品の調達から製造や販売まで一連の各工程を 価値(Value)の連鎖(Chain)として捉える考え方
3 ビジネス ビジネスモデル キャンバス
提供価値や顧客、販路、コスト、収益等の9つの項目から、ビジネスモデルを整理するために使うフレームワーク
4 知財 事業戦略と知的財産戦略の融合
研究開発型スタートアップが大企業と協業や競合する際に武器になるように事業戦略と融合した知財戦略を構築する考え方
5 知財 特許ポートフォリオ
保有特許を、技術分野、課題、解決手段、製品分野、出願・登録年別等で分類し、経営戦略や競争力評価に活用するフレームワーク
6 知財 IPランドスケープ
自社、競合他社、市場の研究開発、経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み、自社の市場ポジションについて現状の俯瞰・将来の展望等を示すもの

3 IPASメンターが日頃から心がけていること

 知財メンタリングに使える基礎的知識は、ある程度座学で学ぶことができますが、実際に知財メンタリングを実施するには、実践的トレーニングが必要となります。ただし、そのようなトレーニングを積む機会は多くなく、各人が、日頃の業務から意識して取り組んでおく必要があります。では、先輩メンターはどのように取り組まれているのでしょうか?

日頃から取り組めること
コミュニケーション

 知財メンタリングでは、研究開発型スタートアップの技術だけでなく、ビジネスへの想いや狙い等も理解する必要があります。そのためには、相手の話を傾聴し、真意を引き出すといったコミュニケーションスキルが必要となります。
 是非、日常生活から上記を意識して人とコミュニケーションをとってみてください。
人的ネットワーク

 知財メンタリングで必要な専門知見は多岐にわたりますが、それらを1人で網羅することは 難しいことが多いです。そのため、専門知識を持つ人々のチームでメンタリングすること、そして、自身は、ビジネスや知財の専門知見を持つプロジェクトマネージャーの立場でメンタリ ングすることが有効です。
 是非、日頃から自身の専門家ネットワークを築くようにしてください。
情報収集

 研究開発型スタートアップの世界は、常に新しい技術、ビジネスが生まれてきます。しかし、全く新しいものというわけではなく、既存ビジネス・技術に類似する点も多くあります。
 そのため、日頃から最新のビジネスや技術情報を収集し、ビジネスパターンや技術の基礎的知見のインプットを行ってください。
業務の中で取り組めること
仮説検証と提案

 研究開発型スタートアップのメンタリングの際は、課題が必ずしも明確でない場合も存在します。そのような際でも、どこに課題があり、それに対しどう助言すればいいのか等の仮説を立てて提案するスキルが必要となります。
 是非、通常の業務の中でも、特定した課題に対して仮説を立て提案する癖をつけてください。
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