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スタートアップエコシステムと知財

Christensen O’Connor Johnson Kindness PLLC コフランド真起子氏 インタビュー
米国の商標実務を通じて学ぶ、海外進出に向けた知財戦略

FY2025 インタビュー グローバル

スタートアップが海外進出を進めるにあたり、特許と並んで十分な検討が必要となるのが、商標だ。進出予定の国・地域で、希望する会社名や製品名で商標を取得できるのか、他社が既に商標を取得していないか等、事前に確認しなければならないことは多い。

米国では本来であれば出願する立場にはない者が出願する「冒認出願」による商標の悪用が目立つようになり、商標出願や審査の実務にも影響が出ているという。そこで今回は、米国ワシントン州シアトルに拠点を置くChristensen O’Connor Johnson Kindness PLLCで勤務する特許弁護士のコフランド真起子(Makiko Coffland)氏に、商標の話題を中心に、海外進出を見据えたスタートアップの知財活動について詳しく話を伺った。

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Christensen O’Connor Johnson Kindness PLLC 米国弁護士
コフランド真起子(Makiko Coffland)氏
ライフサイエンス分野の研究者として従事した後、米国のロースクールに留学して米国弁護士の資格を取得。米国および外国の商標関連業務(調査、クリアランス、出願、登録、維持、権利行使など)が専門。特にライフサイエンス分野における専門知識と経験を活かし、規制の厳しい製薬分野においてクライアントのブランド保護を支援している。

製薬分野の商標の権利化・権利行使にグローバルに対応するコフランド氏

 コフランド氏は、米国および外国の商標関連業務(調査、クリアランス、出願、登録、維持、権利行使など)を専門としている。特に、ライフサイエンス分野における専門知識と業務経験を活かし、規制の厳しい製薬分野においてクライアントのブランド保護を支援しているという。

「知財の仕事に就く前はライフサイエンス分野の研究者として勤務しておりました。その後、米国ロースクールに留学して特許弁護士の資格を取った後、グローバルな知的財産権に関わる法律業務に従事し始めました。当初は自分の専門でもあったライフサイエンス分野の特許実務が中心でしたが、上司の勧めで商標関連業務に触れる機会があり、その面白さに魅力を感じて、今は商標をメインの業務にしています」(コフランド氏)

 製薬分野では、通常の商標実務とは異なる専門性が求められる。例えば、医薬品は、名称の類似や誤認によって医療現場の混乱を招きかねないため、FDA(米国食品医薬品局。日本における厚生労働省に該当)等が実施する薬事承認審査において名称の妥当性が判断される。また、治験フェーズでの名称、商品として販売する時での名称など、製品開発のプロセスを通じて複数の名称を用いる必要がある。これらに対応出来るコフランド氏は、その業務の多くが製薬分野のクライアント対応になってきたという。

米国では商標の冒認出願が増加。外国企業は現地代理人への依頼が必須に

 米国では、スタートアップの評価を行うにあたり、知財ポートフォリオが重要視される。知財ポートフォリオの中には、会社名や製品名に関する商標も含まれる。コフランド氏によると、自分で使用しない商標を取得して悪用する、いわゆる冒認出願が米国では大きな問題となっているという。この問題の対策として、米国特許商標庁は、外国の出願人が行う全ての商標手続は、米国弁護士の資格を有する者に代理されなければならないとする規則を2019年8月に追加した

 米国は世界各国の中でも商標出願が多い国であるため、商標審査に時間がかかるという。いずれ米国に進出する予定があるのであれば、早い段階で米国での商標出願を検討しておくべきだ、とコフランド氏は述べる。

「米国では、商標を取得しようとする名称やロゴについて、米国で使用実績がない状態であっても、今後使用する意図がある旨を証明できれば商標出願を行うことができます。相談をするのに早すぎることは無いので、できるだけ早く専門家に相談するのが望ましいですね」

知財ポートフォリオの質まで評価する米国の投資家

 投資家が知財ポートフォリオを評価する際に、スタートアップから提供すべき情報は何か。コフランド氏によると、特許や商標の権利の有無だけではなく審査経過やライセンスの契約状況等も含めて評価の対象であるという。詳細な情報を急に投資家に催促されて焦らないよう、審査経過の書類をフォルダにまとめておくなど、代理人と協力しながら日々準備をしておくのが望ましいとコフランド氏は述べた。

「投資家は基本的にスタートアップの将来性を買って投資をしています。知財というのは、スタートアップの将来性を示す一つの材料ですよね。知財を理解し、積極的に活用しているかがスタートアップのその後の成功を左右する重要な点にもなり得るので、投資家はその点にとても重きを置きます。

 知財ポートフォリオは、出願件数だけではなく、審査過程で適切な対応を行っているか等のポートフォリオのクオリティまで見られることがあります。的確な部分をしっかり権利として確保しているか、それによって買収額もだいぶ変わってきます。米国の投資家は弁護士を使ってスタートアップの知財ポートフォリオの調査をよく行っています。我々もそういった依頼を受けることがよくありますよ」

 投資家の知財に対する関心の高さと同様に、スタートアップ経営者の知財に対する関心も高まっているとコフランド氏は感じているという。

米国で代理人を探すポイント

 最後に、米国で代理人を探すポイントについてコフランド氏に伺った。

「多くの日本の特許事務所は、各国に提携している事務所があると思います。日本で特許出願などを既に行っているのであれば、日本の代理人経由で現地の代理人に依頼するのが一般的です。

 一方、アメリカは世界の中でも弁護士費用が高く、専門性が高い国です。大手の弁護士事務所は一般的に弁護士費用が高くなる傾向があるので、弊所のような知的財産を専門とするブティック事務所を探して依頼することを考えても良いのではないでしょうか」

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制作・編集●合同会社二馬力 聞き手・文●山田光利 写真提供●Makiko Coffland
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