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バイオ・ライフサイエンス

ライフサイエンス/バイオ系(4)
長期的な視野で開発段階から承認制度、市場戦略を考えておく

業種や業務、技術カテゴリーなど分野別の知財戦略を専門家にヒアリング。
当該ジャンルの起業・スタートアップに必須の基礎的な知識をお届けします。

テーマ:バイオ・ライフサイエンス

  • 講師

    阿部 浩之 氏

    • 国立研究開発法人国立成育医療研究センター
      開発企画部 知財・産学連携室長
  • 監修

    森田 裕 氏

  • 監修

    大門 良仁 氏

 今の製薬会社は、社内で研究開発することは少なく、オープンイノベーションでアカデミアにシーズを求めることがほとんどです。最近の米国で承認された薬の約7割はオープンイノベーションから生まれていると言われています。

 しかし、スタートアップに関しては、米国と日本では事情が少し異なります。米国は、研究者の起業が多いのに比べて、日本の研究者はなかなか大学から一歩踏み出せずにいます。その理由は、米国の起業家教育が進んでいるというよりは、起業経験者が圧倒的に多いことが影響していると考えられます。

 米国は、経験者によるバックアップ体制が整っており、ボランティア的に助言してくれる人が存在するのが大きな違いです。例えば、スタンフォード大学医学部のSPARKプログラムは、製薬会社の現役、OBや、起業経験者が一同に集まり、いろいろなアドバイスをしてくれるそうです。日本にも同じような場が作れるといいのですが、今は製薬会社が集積している地域も減っており、なかなか難しいところです。

 医薬系での起業の難しさは、特許を取ったとしても、実用化されるまでは5年から10年かかってしまうこともあります。薬機法に従った開発をしていかないと実用化には至りませんが、時代が変われば、法律も変わります。今は、アプリも医療機器に含まれるようになりました。

 では次に、どのような変化が起こるか、それは予知できません。重要なのは、患者さんにとって役に立つものは何か、を考えることです。それさえ達成できれば、制度側も医療現場で使えるように、柔軟に対応してくれるはずです。

 特許や承認が取れたとしても、それが事業として成立するかはまた別の話です。医療機器の場合、保険収載の問題があり、想定していた価格にならなければ、事業として収益化できない懸念も出てきます。承認を取ることに気を取られがちですが、価格についても、開発の段階から厚生労働省の経済課に相談しておきましょう。

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