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IPAS(知財アクセラレーションプログラム)運営の手引き

メンタリング結果から見えてきた運営上の注意点

事業を継続的に改善するためにメンタリングを終えたメンターやスタートアップ企業にアンケートを行い、有識者委員会での意見をもとに分析を行いました。その分析結果を紹介します。

メンタリング結果に影響を与えるスタートアップ側の要因

メンタリング参加者のコミットメント

メンタリングではスタートアップ自身が自社の状況の棚卸、整理し、メンターとの議論材料として提示する必要があります。したがって、スタートアップ側のメンタリング参加者による積極的な情報開示や自発的な課題抽出が必要です。公募時に運営側がスタートアップに対して、想定される時間の確保を求めることで、必要なコミットメントを可視化することも有効です。

経営陣のコミットメント

メンタリングに知財担当者のみが出席する等、ビジネス戦略について十分に議論することが難しい場合は、ビジネス診断が出来ずに進むため、知財戦略が不適切なものになる可能性があります。知財戦略は適切なビジネスモデルに基づいて最適化されますので、ビジネス面での深い議論のためにも経営陣のコミットメントが重要です。

スタートアップによる課題の思い込み

スタートアップの中には、「すでにビジネス戦略の検討を自社で行った」、「外部専門家に相談済み」等の理由により、改めて課題を把握することに対してマイナスな反応を示す場合があるので注意が必要です。

Good!

知財戦略を立案した後は、具体的な実行計画に落とし込むことが必要です。戦略だけ立てても絵に描いた餅にならないように、具体的に進めるための開発ロードマップ、出願計画、収支計画などに落とし込んで大きく進展した事例があります。コミットメントの高いスタートアップと経験豊富なメンターの組み合わせによって、メンタリングの成果がより大きくなります。

メンタリング結果に影響を与えるメンタリングチーム側の要因

メンタリングチームの構成

メンタリングを円滑に進めるためには、メンタリングチームにメンター経験者を最低1名含めることが好ましいです。 また、メンターの専門知識・経験が十分な場合においても、ファシリテーションスキルの不足により効果的なメンタリングが実施できない場合があります。この様な場合には、適宜チームミーティングを行うなどして、メンター経験者を中心に対策を議論し改善をはかります。

レベル合わせのスキル

メンター側からの依頼にスタートアップが対応できない場合、「コミットメント不足」なのか「専門知識が足りないことによる理解不足」なのかを区別することが重要です。後者の場合、具体的な資料のまとめ方や、調査すべき情報ソースの例示など、かみ砕いて説明することで改善をはかります。メンターが自発的に情報を取りに行く姿勢も重要です。

中長期的な視点

直近の課題に対処したことで、メンタリング満足度は高いものの、戦略性をもった事業拡大についての寄与がない場合があります。直近の課題相談に乗ることは、信頼関係を構築する意味でも重要ですが、メンタリングをスタートアップ自身の成長につなげるためにも常にビジネスの全体像の把握を意識しメンタリングをすすめることが重要です。

迅速な知財調査の実施

知財戦略立案のためには、知財調査の活用が必要不可欠です。メンタリングの期間内に調査結果をしっかり分析できるように、運営側は出来るだけ早い時期に知財調査を実施することを促すことが重要です。

Point!

メンタリングチームとしては、スタートアップが戦略を考える上での戦略フレームやテンプレートなどをメンターが紹介し、スタートアップに記載してもらうことで、課題が整理され問題解決に結びつきやすくなった事例もあります。また、メンタリング終了後に自走できるようにメンタリング内容を文書化し、残しておくことでスタートアップにとっての指針となります。

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