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知財戦略⽀援から⾒えた スタートアップがつまずく14の課題とその対応策

2.プログラムを通じて把握した課題と対応策

課題1 事業の絞り込み・優先順位付けが難しい

自社の技術はどのような分野にも適用できると思われるが、どの分野に的を絞るのかわからない。
複数の事業での進出を検討しているが、分野を絞った⽅が良いのかわからない。

Point

・自社の技術の強みと想定顧客の悩み事の“マッチング”を起点にし、市場性や事業の熟度等を加味していくことで、進出すべき事業の絞り込みがしやすくなります。
・進出したい複数の事業について、技術開発と事業の計画の関係性図で整理して、優先度の⾼い事業を明確化しましょう。

事例① 優先的に進出する分野を、自社技術の強みと想定顧客の悩み事を起点に絞り込む

1.スタートアップの課題

 スタートアップの技術は、優れたアルゴリズムをベースとするAI関連の技術でした。
そのため、当該スタートアップの技術は、多様な領域で活⽤でき、多様な顧客から受託開発事業を請け負っていました。
 そのような中、当該スタートアップは、更なる成⻑を⽬指し、受託開発事業のみに頼らない事業形態を目指すことにしました。そこで着目したのが自社技術を生かしたライセンス事業でした。
 しかし、ライセンス事業を確⽴しようにも、今後進出する分野が絞れていないため、想定顧客やバリューチェーン等が具体化できず、ライセンス事業を具体化できずにいました。

2.IPASでの対応

 上記の課題に対し、メンタリングチームは、ブレイン・ストーミングにより、事業のアイデアを、スタートアップと一緒に出し合うことにしました。
次に、出てきたアイデアを一定の視点から絞り込むことにしました。
 今回は、当該スタートアップの技術の強みと想定顧客の悩み事の“マッチング”を起点にし、その後、市場性や事業の熟度という視点で絞っていきました。

自社技術の強みとこれが効く場面から、技術の強みと想定顧客の悩みをマッチングさせる


3.本事例のkey factor

顧客にとっての価値を起点としよう

 自社に適した事業を絞り込むためには、自社技術の強みだけではなく、その強みにより、 見込み顧客の悩みを解消できるかどうかを考えることが重要です。

他の視点も加えて事業を絞り込もう

 自社技術の強みと想定顧客の悩みがマッチする事業が複数具体化できたら、市場性や自社技術の開発段階等の視点も加えて、最適な 事業を絞り込むことが重要です。

事例② 複数の事業それぞれの開発とビジネスの関係性を整理し幹となる事業を具体化する

1.スタートアップの課題

 スタートアップは、自社の技術力を背景に、多様な事業展開を考えていました。
 スタートアップの技術力を踏まえるとどの事業も進出可能に見えますが、人材面や資金面等が限られる中、同時並行的に取り組み始めることは、リソースの不足による開発や事業立ち上げの遅れ、同時並行で開発を行うことによる運転資金の枯渇等が懸念されました。
 しかし、スタートアップでは、どの事業を優先して注力すべきか決めかねていました。

2.IPASでの対応

 上記の課題に対し、メンタリングチームは、スタートアップの今後5年間のロードマップを整理することで、事業の優先度を“見える化”する手法をとりました。
メンタリングチームは、スタートアップに今後の各事業の技術開発・知財の権利化及びビジネスの予定を描いてもらいました。次に、スタートアップに質問をしながら、各予定を時系列で整理し、それぞれの関係性を矢印で表したロードマップを作成しました。
 これにより、矢印が収束していく事業がスタートアップにとって幹となる事業であるということが明らかになりました。

ロードマップのイメージ

 なお、事業の優先度を決定する際には、上記の幹となる事業を絞り込む以外に運転資金の観点も重要です。例えば、ローンチの時期が早く安定して収入を得られる事業を優先し、そこで得た資金を基に開発に時間がかかる事業に着手するという考え方も重要です。

3.本事例のkey factor

ロードマップを描こう

 ロードマップを描くことで、最も注力すべき事業が何かが整理でき、複数の事業の優先順位がつくようになります。

まず安定的な収入を得る事業を育てよう

 創薬事業等開発に時間と資金が必要な事業を進めるには、まずは安定した売上が見込まれる事業に取り掛かることも有力なアプローチです。

目次
1.IPASとは 2.プログラムを通じて把握した課題と対応策
3.おわりに Column
目次 1.IPASとは 2.プログラムを通じて把握した課題と対応策 3.おわりに Column
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