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知財戦略⽀援から⾒えた スタートアップがつまずく14の課題とその対応策

2.プログラムを通じて把握した課題と対応策

課題5 秘匿又は権利化の見極めがうまくできない

外部に製造等を委託する場合に、ノウハウとして秘匿するのか権利化するのかを
どのように判断すれば良いのかわからない。

Point

・自社の技術の秘匿又は権利化の検討は、自社の技術の内容や、自社の製品の製造工程を踏まえて検討することが必要です。
秘匿する場合でも、技術流出に備えて専門家に相談しましょう。

事例⑨  専門家の協力を得て、秘匿又は権利化を見極める

1.スタートアップの課題

 スタートアップは、製品の量産体制を整えるため、国内の製造事業者への外部委託を考えていました。
 スタートアップは、外部委託業者によるリバースエンジニアリングの危険性は認識しており、秘匿と権利化を活用して技術を保護することが有効であることも理解していましたが、実際にどのような視点で、秘匿するものと権利化するものを特定するのかがわからず、外部委託契約が進まない状況となっていました。

2.IPASでの対応

 メンタリングチームは、スタートアップが作成した製造工程の一覧表を確認し、社員が感覚で調整している工程等他社が容易に真似できない部分を秘匿とすることにしました。

秘匿化するか権利化するかの見極め

 上記以外にも、ユーザーインターフェース等、技術の内容がすぐにわかってしまうもの等は権利化し、特定の技術者しかできないテクニック等はノウハウとして秘匿化することが一般的であること、秘匿する場合、不正競争防止法上の営業秘密として保護されるためには「秘密管理性」、「有用性」、「非公知性」の3要件をすべて満たすことが必要なこと等を助言しました。



3.本事例のkey factor

専門家に相談しよう

 「秘匿や権利化等の打ち手」、「技術流出への対応策」等を考えるには、専門的な知識が有効なため、専門家への相談が重要です。

見てわかるモノは権利化が基本

 特に、ものづくりにおいて技術の内容がすぐにわかってしまうもの等は権利化することが基本となります。

事例⑩ 海外への製造委託の場合は、秘匿部分を一層慎重に見極める

1.スタートアップの課題

 スタートアップは、海外工場への製造委託を予定していました。
 当初は委託先が必要な部品を全て調達し、製造するという委託内容を計画していました。しかし、海外における完璧なリバースエンジニアリング対策は存在しないと言われるような環境において、このような委託内容では、すぐにスタートアップの技術が流出してしまうことが懸念されました。

2.IPASでの対応

 メンタリングチームは、このような状況を踏まえ、委託内容を見直すことを提案しました。
 具体的には、スタートアップの製品のコア技術をつかさどる部品は、日本国内で調達し委託先に支給する形とすることを提案しました。
また、製品の肝となる部品の配置や部品ごとの間隔等については、なぜそのような配置や間隔になっているかはノウハウとして秘匿することを提案しました。このような措置は、たとえ設計図が流出したとしても、配置や間隔等の理由がわからず精緻に模倣されない場合があり、それにより模倣品の質を下げるという効果が期待できます。
 さらに、日本で調達する場合でも、現地では調達先企業名がわからないようにすることや、許認可を得る場合に政府機関に提出した図面が地元競合企業等に流出するケースへの対策もアドバイスしました。

海外製造におけるリバースエンジニアリング対策


3.本事例のkey factor

国内調達の余地は残そう

 海外に製造委託する場合でも、コア技術の部分は国内での製造や調達とすることで、リバースエンジニアリングを抑止しましょう。

製品内部の仕組みやその理由は説明しない

 特に海外では、設計図が容易に流出することがあるため、流出を想定して、製品内部の仕組みやその理由は説明しないことや更にはブラックボックス化すること等が肝要です。

目次
1.IPASとは 2.プログラムを通じて把握した課題と対応策
3.おわりに Column
目次 1.IPASとは 2.プログラムを通じて把握した課題と対応策 3.おわりに Column
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