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知財戦略⽀援から⾒えた スタートアップがつまずく14の課題とその対応策

2.プログラムを通じて把握した課題と対応策

課題10 自社技術に関連する特許調査の検討と対応方法

自社で開発予定の製品やコア技術に関連する他社特許の調査結果をどう活用するのかがわからない。

Point

・自社技術に似た他社による出願を認識したとしても、そこで諦めるのではなく、冷静に対処しましょう。
・既存の権利保有者が存在する場合は、その権利保有者との関係性権利行使された場合の自社のダメージを考慮して対応方針を決めましょう。

事例⑰ 出願状況や拒絶理由を把握し、冷静に対応する

1.スタートアップの課題

 スタートアップが自社で開発を考えている製品について、大きく上位概念化された権利範囲の広い特許出願が他社によって先にされていました。当該スタートアップもこの出願がそのままの権利範囲で特許になるとは考えていなかったものの、競合他社の権利が有効な範囲と差別化を図るために自社の特許出願戦略をどうすれば良いか迷っていました。

2.IPASでの対応

 メンタリングチームは、まず、スタートアップの技術分野に関する各国の特許出願状況及び審査状況を調査しました。
 その結果、この技術分野においては、広い権利範囲の特許は拒絶される傾向にあり、懸念対象である競合他社の特許出願についても、広い権利範囲の特許出願は拒絶され、その他の狭い権利範囲の特許出願もまだ審査中で権利化されるかどうかはわからない状況でした。

権利侵害の可能性があっても状況を正確に把握して自社の出願戦略に役立てる

 また、スタートアップは、できるだけ権利範囲の広い特許の取得を狙っていたので、メンタリングチームは、調査結果を分析し、スタートアップが特許を取得するための方策について検討しました。

3.本事例のkey factor

他社による出願があっても冷静に対処しよう

 特許出願されているからといってそのまま権利化されるかどうかはわかりません。そのため、他社による特許出願の審査状況等を逐次把握しておくことが重要です。

先行する特許出願から学ぼう

 自社が特許出願を行う領域において、他社の出願内容や出願状況を分析することで、自社の出願に活かしましょう。

事例⑱ 既存の特許権等の権利保有者との関係性に合わせて対応方針を決める

1.スタートアップの課題

 スタートアップは、優れたアルゴリズムを有するIT企業でした。
 自社技術に関連のある特許出願に関する調査検討が不十分であると考えていましたが、具体的にどのように調査を実施し、調査結果に対してどのように対応すべきかがわかりませんでした。

2.IPASでの対応

 メンタリングチームは、特許の調査方法と、特許がどのような範囲で権利化されているか等特許の読み方について、具体例を使って説明しました。
 さらに、先端的な技術分野においては、この分野の技術者が一般的に使用している技術も特許出願されているケースがあるので、その場合の対応方法についてもアドバイスしました。
 すなわち、もし、将来他社の特許が成立してしまった場合にはライセンス許諾を得るか、スタートアップ側の仕様変更で逃れるかになります。他方で、もし明らかに特許が成立しないと考えられる場合には何も手を打たないことも考えられますが、専門家と共に相当詳細に検討する必要があります。
 上記のいずれの方法をとるかは、後々他社が権利行使してきた際の自社の被るダメージの水準によって決めることが一般的であると助言しました。また、同様に影響を受ける別の他社と協業して利用に向けた共同戦線を組む、クロスライセンスを狙うといった手法もあると助言をしました。

権利侵害の可能性があっても状況を正確に把握して自社の出願戦略に役立てる


3.本事例のkey factor

仕様変更等を考えよう

 自社の技術が、請求項で書かれている内容のどれか一つでも異なっていれば、原則侵害とはならないため、特許侵害が懸念される場合は、まずは仕様変更を考えてみましょう。

権利行使された際のダメージで手法検討

侵害の懸念がある場合の対応方法については、後々他社が権利行使してきたときに自社が被るダメージを踏まえて最適な手法を検討しましょう。

目次
1.IPASとは 2.プログラムを通じて把握した課題と対応策
3.おわりに Column
目次 1.IPASとは 2.プログラムを通じて把握した課題と対応策 3.おわりに Column
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