2.プログラムを通じて把握した課題と対応策
課題3 有効なライセンスビジネスを描けない
誰をライセンス先とするのか、ライセンスビジネスにはどのようなパターンがあるのか、
複数のビジネスのパターンをどう比較検討するのかがわからない。
Point
・業界構造を把握しライセンス先の候補を洗い出したうえで、各候補の営業力等総合的な視点でライセンス先を決めましょう。・他社と協業したライセンスビジネス等複数のスキームを描き、自社にとって最も有利なビジネススキームを描きましょう。
事例⑤ 業界構造、ライセンス先の営業力等を踏まえて、ライセンス先を検討する
1.スタートアップの課題
スタートアップは、試薬キットに係る特許を有していましたが、自社で製品を販売する想定はなく、この特許をライセンシングすることで安定的な収入を得られるのではないかと考えていました。しかし、ライセンス事業について実務的な経験がなかったため、誰に、どのようにライセンスすれば自社にとって効果的なのかがわからずにいました。このため、スタートアップは付き合いのある製造工場しかライセンス先として想定していませんでした。
2.IPASでの対応
メンタリングチームは、スタートアップにヒアリングし、業界構造とプレイヤーを図で整理しました。その結果、ライセンス先として、製造工場以外にこの試薬キットの販売代理店も候補となることがわかってきました。
その上で、メンタリングチームは、販売代理店をライセンス先にした方が良いのではないかと提案しました。これは、当該製品の市場はこれから広げる必要があること、販売代理店であれば主な顧客候補である研究所や大学の研究室にネットワークを持っていること等を踏まえたためでした。
3.本事例のkey factor
ライセンス先を検討する場合は、狙っている業界がどのような構造で、どのようなプレイヤーがいるのかを図で整理することが有効です。
ライセンス先を絞り込む際は、想定顧客に対するネットワーク・見込まれる売上等を総合的に勘案することが重要です。
事例⑥ 他社と協業したライセンスビジネス等複数のスキームを描く
1.スタートアップの課題
スタートアップは、優れたAI技術を持つ企業であり、その技術を使ってライセンス事業に踏み出すことを模索していました。
しかし、これまでは受託開発を中心としていたため、ライセンス事業のスキームを明確に描けていませんでした。そのため、ライセンス事業の実現に向けた取組が進んでいませんでした。
2.IPASでの対応
メンタリングチームは、スタートアップに対し、ライセンス事業のスキームは複数考えられることを助言しました。
具体的には、自社の技術が組み込まれる部品の製造会社に対してライセンスするスキームと、自社の技術を組み込んだ部品を使用する完成品メーカーに対してライセンスするスキームがあり、それぞれの特徴を示しました。
後者の場合、前者に比べて製品の売上が大きいためライセンスフィーが高くなる反面、自社の技術を組み込んだ部品が完成品メーカーにとって価値のあるものになるよう、部品製造会社とともにブラッシュアップしていく必要があるため、より戦略的な取組が求められることになります。
3.本事例のkey factor
一口に「ライセンスビジネス」と言っても、多様なスキームを描くことができます。自社の技術優位性や想定顧客(ライセンシー)の売上、そのビジネスを行うために自社が割けるリソース等を勘案し、最適なスキームを選ぶことが重要です。
実現のためのハードルは存在しますが、より大きな売り上げを見込むためには、他社の製品と組み合わせた製品を完成品メーカー等にライセンスすることが有効な場合もあります。