調査項目一覧表解説
II.対象技術等毎の、対象会社における利用可能性・利用可能範囲の調査
2.自社帰属の対象技術等の調査
(2) ブランド(商標権)に関する調査
a. 対象会社が利用しているブランドについて法的保護を受けるために必要な手続の遵守状況の調査
① 商標出願の有無
② 商標審査手続における補正、拒絶査定
③ 登録(防護標章登録を含む)の状況
④ 出願国
調査目的
対象会社が利用しているブランドが法的に保護されているか否か、今後も継続的にブランドが保護される得るか、商標権を取得している地域的範囲と商圏(マーケット)が一致しているかを確認します。
b. (権利化されている場合)権利の有効性の調査
① 登録料が支払われていること
② 権利の存続期間
③ 異議申立・審判請求(無効、不使用取消、不正使用取消)の有無・内容
④ 無効理由の有無
調査目的
第三者からの権利無効主張の可能性の有無及び無効になる可能性を確認することで、今後も継続的に商標の排他的な使用が可能か確認します。
c. (権利化されている場合)権利範囲の調査
① 商標の指定商品・指定役務
② 商標の類似の範囲
③ 指定商品又は指定役務の類似の範囲
調査目的
ブランドが保護される範囲、及び第三者からの権利侵害主張の可能性の有無を確認する。
d. (権利化されている場合)使用実態の調査
対象会社(ライセンスしている場合はライセンス先含む)におけるブランドの使用状況
調査目的
ブランドの実際の使用状況を調査することで、不使用取消による商標登録取消がなされる可能性の有無を確認できます。
e. ブランドに対する、担保設定及び第三者へのライセンスの設定の有無及びその内容の調査
① 担保設定の有無及び内容
② 通常使用権又は専用使用権の有無及び内容
③ 契約上の独占的使用権などの対象会社によるブランドの利用を制限する条項の有無及び内容
調査目的
対象会社がブランドを利用する際に、障害や負担があるかどうかを確認します。
f. ブランドのライセンス・アウトの有無及びその内容
① ライセンス・アウト契約の継続性
② 独占禁止法違反の有無
調査目的
ライセンス料収入の継続性が担保されていることを確認します。また、当該ライセンス契約が独占禁止法に抵触しないかを確認します。
解説
商標として登録されていても、登録料の未払いや 不更新等により、商標権の効力が消滅する可能性があります。また、無効理由の存在や不使用取消請求などによって、事後的に商標登録が消滅するおそれもあります。そこで、登録が確認できた商標権についても、理論上は、その権利の有効性(や後述する使用状況)を調査する必要があります。
このうち、登録料の支払い状況や更新手続の有無は、形式的かつ客観的な資料により容易に確認することができます。一方、商標の無効理由の調査については、知財DDに係る期間や費用上の制約により、一般的には難しいため、そのブランド自体が出資等における価値の中止委であるといった事情がない限り、 知財DDにおいて調査することはあまりありません。
これらの調査項目の調査資料としては、例えば、登録原簿やJ-PlatPatがあり、これらを通じて、登録料の支払い状況や権利の存続期間のほか、異議申立等の有無が確認できます。
解説
商標権は、指定商品・指定役務の範囲でのみ独占排他性を有するものであることから、まず、登録されている商標権の指定商品・指定役務で必要な製品等をカバーしているかどうかを確認する必要があります。
なお、商標権は、登録標章と類似する類似商標や類似商品・役務に対しても禁止権(差止め請求権)として及ぶため、実際上の権利行使においては、商標の類似性や商品・役務の類似性も重要な要素となります。しかし、これらの類比の判断は多分に法的判断であり容易でない場合も多いため、実務上は、知財DDにおいて調査することは、現に紛争の対象となっている商標や、取引の目的となっている極めて重要な商標などに限定されると考えられます。
これらの調査項目の調査資料としては、J-PlatPatのほか、検査機能に優れた民間の商用データベースを利用できます。
解説
商標は、商標権者が継続して3年以上、登録商標を指定商品・指定役務に使用していない場合には、第三者がその登録の取消を請求することができるため(商標法50条)、対象会社の保有する登録商標がこのような不使用取消の対象にならないかどうかを調査する必要があります。
これらの調査項目の調査資料としては、例えば、ブランドと製品等の対応関係のリストや、製品等のカタログ等の販促資料があります。カタログには使用時期が記載されていることが多く、商標が使用されているか否かといった使用状況を確認することができます。
解説
商標権に担保権や第三者ライセンス(専用使用権又は通常使用権)を設定できることは、特許権と同様です。内容については特許権とほぼ同様であるため、特許権の項を適宜参照して下さい。
解説
ライセンス・アウト契約の調査については、特許権のところで述べたことが同様に当てはまるため、特許権の項を適宜参照して下さい。
解説
対象会社の製品等の「ブランド」を法的な権利として保護していく上で、商標出願をし、審査を経て商標登録されているか否かは重要です16。仮に商標登録を受けていなくとも、不正競争防止法に基づいて、対象会社の製品等と誤認混同を生ずるような表示については差止請求を行う余地もありますが、模倣者の主観的要件や周知性の立証のハードルは低くないため、やはり商標登録を受けている方が安心です。
これらの調査項目の調査資料としては、例えば、J-PlatPatや登録原簿等があり、出願状況や登録の状況を確認することができます。
16 会社名自体は商標ではありませんが、商標登記を経て、商号としての保護を受けることになります。