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知的財産デュー・デリジェンス標準手順書及び解説

調査項目一覧表解説

Ⅳ.第三者の権利を侵害するリスクの調査(いわゆるFTO調査)

1. 対象会社の技術等と同技術領域・同事業領域に属する他社特許・技術等の調査

具体的調査項目

先行技術調査

調査目的

対象会社の技術等と同技術領域・同事業領域に属する他社特許等・技術の有無を先行技術調査の内容を確認し、先行技術が存在するかどうかのチェックを行います。

具体的調査項目

権利の有効性調査

調査目的

他社特許等・技術が存在し、既に権利化されている場合、その権利の有効性を調査し、権利の有効性を確認します。

具体的調査項目

無効化資料調査

調査目的

権利侵害の可能性が高い場合、問題となっている権利を無効できるかどうかの確認を行い、無効化するための資料の調査を行います。

具体的調査項目

侵害性の鑑定

調査目的

権利の有効性が確認された場合、その権利を対象会社の技術等が侵害していないかの権利侵害の成否について、確認をし、必要性に応じて専門家に鑑定を依頼する。また、過去の鑑定書がある場合にはその内容も確認します。

2.同種技術等に関する他社紛争の調査

具体的調査項目

① ニュース、裁判例等の公刊物に掲載されている他社紛争

② 同業種間の評判等

調査目的

同種技術等に関する他社の紛争を検討することで、対象会社の製品等が現に他社の権利を侵害している可能性、今後権利を侵害する可能性、及び他社から権利侵害の主張を受ける可能性の有無・大小を確認します。

3.対象会社における知財関連紛争の調査

前記III参照。

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解説

出資等の後に、対象会社の製品等を製造・販売し、又は対象会社が有している技術等を利用して新たな製品等を開発・製造・販売していくにあたって、第三者の権利を侵害する等の支障がないかどうかを調査しておくことは重要です。そのような調査は、「Freedom to Operate(FTO)調査」などと呼ばれ、製品等の分野によっては比較的一般的に行われています。

しかし、当該調査はそれ自体のみで多くの時間と費用を要する場合が多いため、期間や費用が限られているDDにおいては、当該調査が十分に行われることは珍しく、前記Ⅲの対象会社が認識している知財関連紛争の調査に止めることが一般的です。仮に、FTO調査を行う場合であっても、現に第三者の権利を侵害していないかどうかや、侵害する可能性が顕著に存在するかどうかを調査する程度であることが多いといえます。

ここでは、内容的にはいわゆるフルサイズ(精緻な)のFTO調査ではなく、知財DDの実務で一般的に行われている、あるいは行うことが現実的に可能と思われる調査を挙げるに止めます。ただし、下記1の調査は、これが行われればリスク調査としては万全ではあるものの、知財DDの中では現実的には難しい場合が多いと思われます。そこで、1に比して容易に行える2又は3の調査によって、網羅的ではないものの、現実的な紛争リスクを把握することが有用です。

なお、事業領域や分野によっては第三者が必須特許(その技術を実現するために必須不可欠又は回避不能な特許)を保有していることがあり、形式的に第三者の権利侵害があることをディール・ブレーカーと捉えると、このような対象会社は常に取引適格を欠くという結論になるおそれがあります。このような場合においては、対象会社が同じく必須特許を保有していることを確認することできれば、当該第三者との間で特許を実施し合う関係となるために、契約として顕在化するかどうかはともかく、いわゆるクロスライセンス関係となり、特許リスクを打ち消すことが可能です。一方で、このような関係は対象会社が当該第三者が実施する非必須特許を保有していても実現できますが、非必須特許の場合には、当該第三者によって回避される余地があるために、必須特許保有の場合に比して慎重な判断が必要となります。

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