調査項目一覧表解説
Ⅲ.対象会社における知財関連紛争の調査
1.訴訟案件の調査
具体的調査項目
① 訴訟当事者
② 対象製品等
③ 訴額
④ 請求内容
⑤ 権利が無効になる可能性(産業財産権の場合)
⑥ 対象会社の主張内容及び相手方の反論内容の概要
⑦ 訴訟終結の見込み及び結果の見込み
⑧ 訴訟終結までの見込み期間
調査目的
顕在化している紛争案件による権利の有効性への影響、製品等の差止のリスク、対象会社が被る損害賠償リスクの確認をします。
2.訴訟外紛争案件の調査
具体的調査項目
① 紛争当事者
② 対象製品等
③ 紛争金額又はその見込額
④ 請求内容
⑤ 権利が無効になる可能性(産業財産権の場合)
⑥ 対象会社の主張内容及び相手方の反論内容の概要
⑦ 紛争終結の見込み及び結果の見込み
⑧ 紛争終結までの見込み期間
⑨ 訴訟移行の可能性
調査目的
訴訟には至っていないが将来訴訟となる可能性のある潜在的な紛争案件による権利の有効性への影響、製品等の差止のリスク、対象会社が被る損害賠償リスクの確認をします。
3.過去の紛争(訴訟、訴訟外)の調査
具体的調査項目
① 紛争当事者
② 対象製品等
③ 和解金額
④ 和解条件
(具体的調査項目は、各技術等に関する前述「担保設定及び第三者へのライセンスの設定の有無及びその内容の調査」「ライセンス・アウトの有無及びその内容」「(技術・ブランド・デザイン・著作物)ライセンス契約等における以下の各事項」参照。)
調査目的
過去に終結した紛争案件が対象会社に与える影響の確認をします。
解説
対象会社が現に抱えている訴訟及び裁判外紛争の調査は、一般的なDDにおいて通常行われるものであり、知財関連の紛争においてもその調査の重要性に変わりはありません。
ただ、知財紛争特有の問題として、特に海外(特に米国)における、いわゆるパテントトロールとの紛争があります。特に米国においては、特に情報通信分野においても多数のパテントトロールが存在しているため、対象会社が米国で事業を行っている場合には、パテントトロールからの警告や訴訟提起を多数受けていることも珍しくありません。
パテントトロールは多くの場合、和解金狙いであり、経済合理性のみで動くことから、パテントトロールとの紛争については、事業会社間の一般的な紛争とは違った基準でその内容や帰趨を分析する必要があり、訴訟が継続中であることを直ちにネガティブに評価する必然性は低いといえます。また、分野によっては極めて多数の訴訟が提起されている可能性があるため、時間が限られている知財DDの場面においては、そもそもそれらを全て検討することは有益ではなありません。なお、パテントトロールに関しては、提訴されるのは比較的大きな企業であることや、大企業であっても技術領域によってはパテントトロールの影響はあまり大きくないことなども考慮する必要があります。したがって、単に開示を受けた訴訟資料を机上で調査するだけではなく、その紛争の実態を踏まえて調査することが要求されます。
これらの調査項目の調査資料としては、訴訟記録や相手方とやり取りをしている文書など、紛争自体に直接関連する資料があります。しかし、時間が限られている知財DDの場面において、そこまで調査をする時間はない場合も多く、対象会社がまとめた訴訟一覧や紛争一覧を踏まえ、訴額の大きな紛争に関する弁護士等の専門家の意見書等を調査し、祖も妥当性を検証するにとどめることも一般的です。