調査項目一覧表解説
II.対象技術等毎の、対象会社における利用可能性・利用可能範囲の調査
2.自社帰属の対象技術等の調査
(4) ソフトウェア又はコンテンツ(著作権)に関する調査
a. 対象著作物の登録状況の調査
登録されている著作物がある場合には、その登録情報
調査目的
登録されている著作物の登録情報から、著作者や権利者を確認します。
b. 権利の有効性の調査
当該著作物の著作権の保護期間
調査目的
著作権が有効に存続しているかどうか、著作者の死亡年や公表年を確認します。
c. 権利範囲の調査
① 対象著作物の内容
② 著作物の類似の範囲
調査目的
対象著作物が保護される範囲、及び第三者からの権利侵害主張の可能性の有無を確認します。
d. 対象著作物の著作権に対する、担保設定及び第三者へのライセンスの設定の有無及びその内容の調査
① 担保設定の有無及び内容
② 非独占的又は独占的利用許諾の有無及び内容
③ 契約上の独占権などの対象会社による対象著作物の利用を制限する条項の有無及び内容
調査目的
対象会社が対象著作物を利用する際に、障害や負担があるかどうかを確認します。
e. 対象著作物のライセンス・アウトの有無及びその内容
① ライセンス・アウト契約の継続性
② 独占禁止法違反の有無
調査目的
ライセンス料収入の継続性が担保されていることを確認します。また、当該ライセンス契約が独占禁止法に抵触しないかを確認します。
f. 対象会社が第三者から著作権を譲り受けている場合に特に必要となる調査
① 著作権譲渡契約に、著作権法第27条及び第28条に定める権利の譲渡が特掲されているか
② 著作者人格権不行使特約が規定されているか
調査目的
著作権法第27条(翻案権)及び第28条(二次的著作物の利用に関する権利)に定める権利については、特に譲渡時に明記しない限り、「著作権を譲渡する」だけでは譲渡されないため、これらの権利の譲渡が適切になされているかを確認します。また、著作者人格権は譲渡不能であるため、対象会社が対象著作物を自由に利用できることが契約上担保されているかを確認します。
解説
著作権が存在していても、保護期間の満了により著作権が消滅している可能性があります。そこで、重要な著作物に関しては、保護期間を確認する必要がありますが、著作権の保護期間は、著作物の種類、著作者が自然人か法人か、著作者の国籍等(戦時加算の有無)、といった要素により著作物毎に期間が異なる可能性があることに留意する必要があります。
著作物の保護期間を知るためには、著作者の死亡年(通常の著作物の場合)や、著作物の公表年(法人名義の著作物や映画の著作物等)を確認する必要があり、著作物の現物(例えば書籍や映画そのもの)に記載がある場合もあるため、著作物の現物を確認することで保護期間を確認できる場合もあります。
解説
対象著作物が著作権で保護される場合であっても、理論上は、その保護の範囲が保護の対象とすべき著作物にとって十分なものであるかを確認する余地があります。しかし、特許等と異なり、著作権については網羅性のあるデータベースが存在しないため、およそ第三者の権利侵害のないことや、対象会社の著作物が第三者の著作物の複製や二次的著作物でないことの確認を行うことは不可能であり、知財DDにおいても、具体的な懸念がすでに明白な場合でなければ、本調査は実施しなくとも良いでしょう。
解説
当該項目は、対象会社の著作権に付されている負担の有無の調査であり、大きく分けて、担保権の負担と、第三者ライセンスの負担が考えられます。
著作権には、特許権同様、質権、譲渡担保権等の担保権を設定することができます。よって、対象会社が保有する著作権を継続的に利用していけるかどうかを判断するためには、担保権設定の有無を確認する必要があります。著作権への質権設定は登録が対抗要件であるため、登録されていれば、著作権登録を確認することでその存否及び内容は分かりますが、登録されていない場合や質権以外の担保権の場合は、担保権設定契約書を確認する必要があります。
また、著作権が第三者にライセンスされている場合、当該著作物を対象会社が独占的に利用していないということであり、さらに、そのライセンスによって対象会社自身による著作物の利用も禁止されている場合(いわゆる完全独占利用許諾の場合)もあり得ます。著作権のライセンスについては、専用実施権等と異なり登録制度がないため、常にライセンス契約等の契約書の内容を確認する必要があります。
解説
ライセンス・アウト契約(特にソフトウェア等のライセンス)の調査については、特許権のところで述べたことが同様に当てはまるため、そちらを参照されたい。
解説
著作権のうち、翻案権(著作権法27条)及び二次的著作物の利用に関する現著作権者の権利(同28条)は、著作権譲渡契約において「特掲」しない限り、譲渡の対象になりません(同61条2項)。これは、譲渡契約において「全ての著作権を譲渡する」「一切の著作権を譲渡する」と記載するだけでは、これらの権利は譲渡されないということになります。よって、対象会社が第三者から著作権を全て譲り受けているという場合には、譲渡契約において同27条及び28条が特掲されているかを確認する必要があります。
また、著作者人格権は譲渡が不可能であることから(同59条)、著作権が譲渡されていたとしても著作者人格権は最初の著作者に残存することになるため、著作権譲渡契約においては、著作者人格権、特に同一性保持権(改変を認めない権利)や氏名表示権について、行使しない旨の特約(著作者人格権不行使特約)を規定することが一般的です。ここでは、例えば、対象会社が導入したソフトウェアについての将来的な改良の有無などの必要性を踏まえて、同規定があるかどうかを確認する必要があります。
解説
著作権には、一応は登録制度も存在するため、知財DDにおいて、対象著作物の著作権登録を調査することもあり得ます。しかし、著作権の場合、登録は権利発生要件ではなく、対抗要件(移転登録、出版権設定登録の場合)、又は法律上の推定効(実名登録、第一発行年月日登録、プログラムの創作年月日登録の場合)が生じるに過ぎず、また、あまり利用されていないという実態もあるため、登録の有無を調査する必要性は、特許権等の産業財産権に比して著しく低いといえます。逆に言えば、登録を調査しても、著作権の権利帰属が必ずしも確認できるわけではありません。
また、著作物には言語、音楽、美術、建築、映画、写真及びプログラムなどの多様なものが含まれる上、二次的著作物、編集著作物及びデータベース著作物などの特殊なものが含まれることから、登録の調査に当たっては、そもそも対象著作物を特定すること自体に困難を伴う点に注意すべきです。
これらの調査項目の調査資料としては、例えば、文化庁著作権等登録状況検索システムがあります。ただし、前述のとおり、著作権の場合はそもそも登録制度自体が権利の存在や権利者を裏付けるものではないため、確認できる内容は限定であることに留意する必要があります。